【野球】有意義な場となったプロ志望高校生合同練習会、継続ならブラッシュアップも必要
NPB入りを目指す高校生対象の「プロ志望高校生合同練習会」は、西日本会場での甲子園と東日本会場での東京ドームで4日間の全日程を終えた。NPBと日本高野連が共催した史上初の試み。参加選手は東西合わせて118人で、スカウト陣も連日バックネット裏に大挙した。
西日本会場の甲子園では、最速153キロ右腕の福岡大大濠・山下舜平大(しゅんぺいた)投手(3年)ら前評判の高かった候補たちが期待通りのパフォーマンスを披露した。東日本会場では、シート打撃で5安打を放った上田西・高寺望夢内野手(3年)ら全国区ではなかった選手たちが躍動。各地区で“色”が出たイベントとなったのも面白かった。
昨秋の神宮大会準V左腕・高崎健康福祉大高崎の下慎之介投手(3年)といった実績を持つ選手も腕試しにやって来た。「来ることに意味があったと思うので。こういう舞台を経験できたこと自体が自分にとって大きな経験」。ヤクルト・橿渕スカウトグループデスクが「新しい発見があった」と感謝したように、コロナ禍で思うような視察ができなかったNPBスカウトにとっても意味のある場となった。
プロアマ双方にとって有意義となった機会ながら、今後の実施継続は未定だ。日本高野連・小倉好正事務局長は来年以降の開催について、「新型コロナウイルス感染状況や他行事などの関係を見ながら、関係者と検討させていただきたい」と話すにとどめた。
春夏の甲子園が中止となった未曽有の事態に端を発して誕生した背景があるだけに、特別な“救済措置”という意味合いは強い。ただ、まだまだ完全とは言えないプロアマ関係の雪解け。日本ハム・大渕スカウト部長が「もっとプロとアマで野球界にとってよりよいことがあれば模索するべき」と口にしたように、お互いの歩み寄りを一つのきっかけとしてほしいと願う。
今回のようなアピール機会の場を続けていくにしても、単純に同じ形式を踏襲していくだけではなくブラッシュアップさせていくことも必要ではないか。練習のメインとなったシート打撃はカウント1-1から開始という方式を採用。投手は1球で追い込める反面、1組中3四死球で交代と決まっていた。
このルールが野手にも影響を及ぼしていたとスタンドから眺めて切に感じた。四死球なら打者はもう1打席与えられたが、そこはアピールの場。再びめぐってきたチャンスで結果を欲しがってか早打ちが目立ち、ボール球に手を出して打ち損じるケースが目立った。
プロ志望届を提出した腕自慢らが明確にNPB入りを意識してプレーする独特な緊張感だったからこそ、やはり紅白戦をやっていても白熱したにちがいない。カウント0-0からの真剣勝負、ゲーム形式でしか表れない試合勘。次の機会があれば、実現することを期待したい。(デイリースポーツ・佐藤敬久)