【野球】地域密着のカープだからこそ…高校生のALS啓発活動に寄り添ったオーナー

始球式を務める御調高の前生徒会長の角森巴海さん=マツダスタジアム(撮影・立川洋一郎)
ALS啓発のTシャツを着て練習するカープ投手陣
ALS啓発のTシャツを着て打撃練習をする広島・松山
3枚

 コロナ禍に加えチームの低迷。今年は明るい話題が少ない広島・松田元オーナーもこの日ばかりは「こういうことを考えながら生徒たちが成長してくれるのはうれしい」と秋空のもとで行われた高校生の始球式を喜んだ。

 17日の広島-中日戦(マツダ)で、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の支援活動に取り組む広島県尾道市の御調高生徒会による啓発イベントが実施された。前生徒会長の角森巴海さん(3年)が始球式を行い、スタンドから温かい拍手が送られた。

 始まりは1通の手紙からだった。昨年12月、松田オーナーの元に生徒らから「ALSへ理解を深める日を作ってほしい」と記された手紙が届いた。16年に教頭だった長岡貴宣さん(57)がALSを発症したことをきっかけに難病支援活動に取り組むことになった経緯も書かれていた。

 翌月、球団職員が同校を訪れ、その場で啓発イベントの開催が決まった。加えて映画「打撃王」のDVDも生徒らに手渡された。1920年から30年代にメジャーリーガーとして2130試合連続出場を果たしたルー・ゲーリッグ選手の伝記映画だ。連続試合出場は、広島OBの衣笠祥雄さんが破るまで世界記録だった。そんな名選手もALSを発症して引退。ALSは別名「ルー・ゲーリッグ病」とも呼ばれている。

 この映画によってゲーリッグ選手を知った生徒もいたという。博学多才な松田オーナーからの粋なプレゼント。ALS啓発活動は野球とは無関係ではなかった。「何回かアタックしないと無理だと思ったが、1回で返事が来た。ビックリしたけど、うれしかった」と角森さんはオーナーの理解に感謝した。

 当日はライト側コンコース近くに、ASLの病状やこれまでの生徒会の活動を紹介するパネルが設置された。また、ALS患者が視線で操作する分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」とカープ坊やがデザインされたコラボTシャツや冠バッジも販売。選手もこのTシャツを着て試合前練習を行った。

 これまでも乳がん検診の啓発イベントを実施するなど、さまざまな社会貢献活動を行ってきたカープ。高校生の訴えにも真剣に耳を傾け、今回のイベントも実現した。地域に根ざし、野球を通してファンに寄り添い、一緒に歩んでいく。これがカープが愛される大きな理由でもある。(デイリースポーツ・赤尾慶太)

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