【野球】DeNA新監督・三浦大輔が作った“当たり前の光景”
当たり前の光景がそこにある。沖縄・宜野湾で行われるDeNAの春季キャンプ。練習終了の時間帯に、複数の行列があちこちに発生する。その先頭では、選手がサインや写真撮影などのファンサービスに応じている。
コロナ禍で行われる来春のキャンプではどうなるか不透明だが、練習後の複数行列は、DeNAでは恒例化しているファンサービスとなっている。その原点は?
2013年から4年間、DeNAを担当した。春季キャンプ。ファンが作る、1本の長蛇の列があった。終着点にはテントがあり、たどっていくと専用のパイプ椅子に座った当時のエース・三浦大輔の姿があった。
1枚1枚丁寧に色紙にサインを書き入れ、会話を交わしながら、写真撮影に応じた。阪神のキャンプがオフの日には阪神のユニホームを着たファンも列に並ぶことも。「阪神ファンやん?」とツッコミながら笑顔で応じる姿もあった。
キャンプ中、選手は球場からブルペン、室内練習場やウエート場などメニューに応じて移動する。選手専用の導線はなくファンと同じ道を移動する。当時、その道中に三浦がサインを求められたことがあった。
「今は練習中だから。○○時に室内練習場の前に来たらサインするよ」。
練習中のサイン依頼は御法度。だが、ファンの中にはいつがオンでいつがオフかも分からないケースもあるだろう。三浦は時間と場所を懇切丁寧に説明。そして予告通り、練習終わりにサイン会を行うのが常だった。
当時の中畑清監督もファンサービスを奨励していた。監督とエースのそんな姿勢は、他の選手にも好影響を与える。サインをするのが当たり前。そんな空気は拡散され、担当する4年間で行列の数はどんどん増えていった。あちこちに行列のできる現在の“当たり前の光景”につながった。
選手にとっては同じ事の繰り返し。だが、キャンプを訪れるファンにとっては、中には常連さんもいるが、一生に一度の機会の人もいる。そんな1人1人に見せる配慮。リーゼントの頭の中に、みんなが知っているその人柄がある。複数の選手のサインを手に、笑顔で帰路に就くファンたちを作り出した。
2021年、三浦大輔新監督就任。どんな“光景”を作り出していくか。楽しみにしたい。(デイリースポーツ・鈴木創太)