【野球】ヤクルト入り東大卒左腕・宮台の胸打つ言葉「努力して才能がある人に追いつく」

 宮台康平投手(25)が第2のプロ野球人生のスタートを切った。13日、支配下選手としてオファーを出してくれていたヤクルトに入団の意思を伝えた。

 11月25日に日本ハムから来季の契約を結ばないことを通告された。その後に育成契約を打診されたが、悩み抜いた末に12球団合同トライアウトの受験を決意。慣れ親しんだ神宮のマウンドで3者連続三振と猛アピールし、チャンスをつかんだ。

 今でも記憶に残るのは日本ハム・勇翔寮への入寮日。東大法学部卒の左腕は「僕のアイデンティティーだと思うので」と小型の六法集「ポケット六法」を持参し、笑顔で我々の取材に応じてくれた。

 この年のドラフト1位は清宮幸太郎。一挙手一投足に注目が集まる中、宮台の言動にも強く引きつけられた。

 学生時代の相棒だったポケット六法は机の隅に置き、野球の解説書など今まで手にしなかった書物を読みあさった。「これまで文武両道でやってきましたけど、今後は『武』の一本でいくので」。理想は米マリナーズの菊池雄星。快速球に憧れ、背中を追ってきた。

 特に心に響いた左腕の言葉がある。昨年末に「JFAこころのプロジェクト 夢の教室」に先生役として参加し、中学2年生に届けたメッセージ。生徒はもちろん、気づけば記者も聞き入っていた。

 「才能で勝負するというより、努力をしてその才能がある人に追いつく。僕はそうやってここまできました」

 甲子園出場を目標に臨んだ高校時代最後の夏は地区大会の3回戦で敗退。宮台は「東京六大学リーグで甲子園に出たやつらと戦いたい」と新たな目標を東大合格に設定し、自らに1日12時間の猛勉強を課して実現させた。

 大学日本代表に選ばれた時は現阪神・大山らプロを目指す選手と身近に接し、刺激を受けたという。現在の目標は1967年の中日・井手峻(現東大監督)以来、東大出身者で54年ぶりの1軍戦勝利投手。まだ諦めない。

 真面目で実直な人柄である一方、お酒の席では豊富なボキャブラリーを駆使して盛り上げ役を務める左腕。「もう一度、頑張ります」。今や、ポケット六法はホコリをかぶっているのかもしれない。特別な使命を胸に覚悟を決めて歩み始めたプロ野球人生。努力という名の才能が花開く瞬間を楽しみに待ち、エールを送り続けたい。

(デイリースポーツ・中野雄太)

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