【スポーツ】4大関の綱とりレースも“1強”の声 照ノ富士が「抜け出ている」理由とは
大相撲春場所は大関復帰と3度目優勝を果たした照ノ富士(29)=伊勢ケ浜=の強さだけが際立った。夏場所(5月9日初日、両国国技館)は4大関となり、綱とりレースが一層、過熱する。周囲から聞こえるのは照ノ富士が「第73代横綱」の一番手候補という声だ。
「期待はできる。ほかの3人の大関よりは。(綱とりは)先とかではない。勝負はすぐ」(安治川親方=元関脇安美錦)。
「3人の大関(正代、朝乃山、貴景勝)を見ていると、しっかりした体調で臨めば照ノ富士の方が力は一つ上」(高島親方=元関脇高望山)。
春場所終盤3日を見れば、“1強”もやむなしだろう。照ノ富士は爆弾を抱える両膝で13日目からの大関3連戦に臨み、出場番付最上位を次々と打ちのめしていった。
13日目の正代(29)=時津風=戦は立ち合いの踏み込みから前ミツを取って電車道。14日目の朝乃山(26)=高砂=戦はもろ手を外して右四つ。まわしを切る技術、相手を半身にする緻密な相撲で相手にしなかった。対戦5連勝と、もう負ける気はしないだろう。
千秋楽、貴景勝(24)=常盤山=は負ければともえ戦の大一番だったが、圧力で上回った。押し込まれたが反撃。最後は馬力で圧倒して優勝を決めた。
武蔵川親方(元横綱武蔵丸)は言う。「正代は何がしたいのか。番付下(の照ノ富士)に立ち合いで一気に持っていかれて。大関は看板だよ。情けない。朝乃山は毎回、同じ(負け方)。もう分かっただろう。稽古不足。幕下と1日20番じゃ強くならないよ」と、奮起を促す。その上で照ノ富士に対しては「ここ一番、決めるところを決める」と、勝負強さにうなった
3敗のうち、平幕阿武咲(阿武松)、志摩ノ海(木瀬)に取りこぼしもあった。それでも芝田山親方(元横綱大乃国)は「照ノ富士は自分のペースを保っている。取り口は(他の)大関3人よりも抜け出ている」と見る。
正代、朝乃山戦では、相手を研究した上でほぼ完ぺきな相撲で攻略している。突き押し一本を貫く貴景勝は別として、正代、朝乃山に対しては「自分より下位と同じ動きをしている。相手に合わせて相撲を取っている」と、欠点を指摘する。
大関、横綱が格下を相手にする場合、相手を見下ろして相撲を取れるかどうか-。横綱白鵬(宮城野)を例に取り、「自分の動きに相手を引きこまないとダメだ」と言う。
下位相手でもいつも先手を取って有利に攻められるわけではない。それでも「じっと待って残す。相手は焦る。チャンスが来れば自分の形に持ち込む。それが地位。地位が違っても中身が一緒ではダメ」と、番付にふさわしい相撲を求めた。
大関の優勝は昨年11月場所の貴景勝が22場所ぶりだった。存在感が希薄だった“看板”だが、史上最大カムバックの“怪物”加入で活性化するか。夏場所で大関が優勝し、名古屋場所(7月4日初日、ドルフィンズアリーナ)が綱とりと、一人横綱白鵬の進退場所となれば、東京五輪に負けじ、熱い夏となる。(デイリースポーツ・荒木 司)