【野球】阪神の快進撃を支える「走」と「守」 “失敗しない”代走陣と守備固めの脇役たち
開幕ダッシュに成功し、首位を独走する阪神。ここまで42試合を戦い、28勝12敗2分けで勝率7割と圧倒的な強さをみせている。快進撃の要因とは。機動力と課題とされていた守備力に注目し、ここまでを振り返る。
強力打線の中で、機動力野球が高い得点能力を生み出している。得点数191、盗塁数34は共にリーグトップ。次の塁を狙うという走塁の意識の高さが結果として表れている。
チームに浸透している積極的な走塁は矢野監督が2軍監督時代から取り組んできたものだ。18年にファームは163盗塁でウエスタン・リーグの新記録を樹立。指揮官は「1軍でも足を使った野球をしたい」と話していたように、継続されている。
どん欲に先の塁を狙う姿勢は相手にプレッシャーをかけ、チームの士気も高める。筒井外野守備走塁コーチは「盗塁を重ねることで向こうも走られたくないという気持ちが出てくる。その中で『打者に対して10割の気持ちで投手を向かわせない』という意味もある。そういったことも含めて、偽走とか、行けるところは行くという姿勢をみせることが大事」と走る意欲を持つ重要性を説いた。
象徴的な試合は11日の中日戦(甲子園)だ。1点を追う七回2死から代打・原口が内野安打で出塁。代走・熊谷は初球に二盗を決めた。その後、糸原の右前打で二塁から一気に本塁へ。外野陣は前進守備を敷いていたが、華麗なヘッドスライディングで同点の本塁を陥れた。
今シーズンは代走が起用に応える場面が多々ある。5盗塁の熊谷を筆頭に江越、植田と盗塁死はゼロ。勝負どころでしっかりとチャンスを広げられているという結果が、終盤の同点や逆転につながっているはずだ。
盗塁に対する意識はもちろん代走だけはない。隙があれば走る。その姿勢が、次の塁を狙うという走塁になり、高い得点力につながっている。
課題とされている守備については現在、リーグワーストの28失策。一方で、ドラフト1位・佐藤輝(近大)や同6位・中野(三菱自動車岡崎)らは堅実な守備でも存在感を示す。また、接戦の試合では山本、板山、陽川、植田らと終盤に守備固めとしても起用される選手の活躍も大きく勝利に貢献している。走塁や守備だけでなく、与えられた役割に全力で応えようとする意識が首位を快走する1つの要因なのかもしれない。※今季成績は5月24日時点(デイリースポーツ・井上慎也)