【ゴルフ】今年5勝の稲見萌寧 強さの秘密とは?“レジェンド”樋口久子氏に聞く

 女子ゴルフ界に新たな風が吹き込んでいる。1999年生まれの“はざま世代”を代表する稲見萌寧(21)=都築電気=が今年早くも5勝を挙げ、獲得賞金額を1億2820万216円とし、ランク2位に躍進している。世界ランキングでも古江彩佳を抜いて日本人2位に上昇し、東京五輪出場圏内を確保。この勢いの源とは何か。日本人初のメジャー制覇(77年全米女子プロ)を含む優勝72回の“レジェンド”樋口久子・JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)顧問(75)に聞いた。

  ◇  ◇

 -稲見選手は逃げ切りでも逆転でもプレーオフ(3勝0敗)でも強さが際立っています。この強さの理由とは何でしょうか?

 樋口顧問「それはデータを見れば一目瞭然ですよ。フェアウエーキープ率もパーオン率も高い。他の選手よりもバーディーチャンスにつく回数が多くて、それが入るか入らないかだけ」

 確かに今季(20-21年シーズンのリゾートトラストレディース終了時点)のスタッツによると、平均ストローク1位、フェアウエーキープ率12位、パーオン率2位、パーセーブ率1位、リカバリー率1位と素晴らしい数字が並ぶ。

 -樋口さんも希代のショットメーカーですが、この数字を支えているのは何なのでしょう?

 「スイングの再現性がとにかく高いことですね。どの番手でもどんなライでも同じテンポでスイングできる。これはなかなかできることじゃないですよ」

 -再現性が高いスイングを身につけられたのはなぜでしょうか?

 「彼女はすごい努力家です。練習を1年中1日も休まず、1日10時間もするという。私もたくさん練習をしました。私の場合は特殊なスイングなので、練習をやっていないと不安になるんですけどね」

 -樋口顧問も常勝のゴルフ人生ですが、試合に出れば優勝という状況が続くと、いい意味の相乗効果も生まれるのでしょうか?

 「それはそうですよ。試合に出たら勝てるんだから、楽しくてしようがないんじゃないかしら。勝てば自信がつきますしね。もちろん相乗効果はありますよ。でも、彼女に聞いたら『やっぱり予選通過したいというのはあります』と言っていました。それはプロゴルファーは誰もが思うことなんですけどね」

 -樋口顧問のように常勝を長く続けるためには、練習熱心、高いショット力とパット力以外に必要なものがあると思います。それは何ですか?

 「その人が持つ運でしょうね。例えば今のコーチが彼女にすごく合っている人なんじゃないかと思います。それも彼女の運。私の場合はほとんどの選手がコーチに付いていない時代に先生(中村寅吉氏)がいましたからね」

 樋口顧問は日本人初の海外メジャー制覇(77年全米女子プロ)をはじめ優勝72回。稲見は2年で7勝。まだ足元にも及ばないが、勢いある新星がどこまで“レジェンド”の足跡に迫れるのか。03年に年間10勝をマークした不動裕理のように一時代を築けるのか。21歳が持つ無限のポテンシャルに大いに期待したい。(デイリースポーツ・松本一之)

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