元広島内野手の庄司隼人さん パ担当スコアラー&編成担当の“二刀流”で奮闘中
元広島の内野手だった庄司隼人さん(30)。19年の引退後も球団に残り、現在はパ・リーグ担当スコアラー兼編成担当として忙しい日々を送る。他球団の戦力を分析するスコアラー業務と他球団の選手をチェックする編成業務。2つの仕事で大切にしていることとは-。現役時代の経験を交えながら、カープへの恩返しの思いも語った。
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庄司さんの仕事は多岐にわたる。6月まではスコアラーとしてパ・リーグ6球団の試合を視察し、戦力分析と資料を作成。交流戦を戦うチームに情報を提供する。交流戦を終えると編成の仕事がスタート。現在はイースタン・リーグの視察が中心で、各球団の戦力外通告やトライアウトに向けた情報収集を行っている。「スコアラーの時はチームが勝つために必要な情報を集め、編成業務では選手の人間性を重視しています」。“2つの眼”を冷静に使い分けながら、鋭い視線をグラウンドに送り続ける。
今季の交流戦はチームがコロナ禍に見舞われ、主力選手が離脱したこともあって3勝12敗3分けと大苦戦したが、一方で林や宇草、中村奨ら若手が台頭し、目覚ましい活躍を見せた。庄司さんが作成したデータを生かして結果を出した選手も多い。「選手の不安材料をなくしてあげること」がスコアラー最大の役目と自負し、あらゆる状況に対応できるよう、きめ細かな情報収集を心掛けた。
編成業務では「2軍で埋もれている投手はいないか、右の代打で使えそうな選手はいないか」など、カープの戦力と照らし合わせながら補強要員となりそうな選手をピックアップしていく。試合開始2時間前には球場入りし、練習を見て「練習態度やしぐさ、全力疾走しているかなどをチェックします」。力はあるが、チーム事情で1軍に昇格できない選手もいる。「現状にあらがっているかどうか。苦しんでいるけど、頑張っているというのは見ている方にも伝わるので」と必死にもがく姿を大切にする。
自身は10年間の現役生活で1軍出場はわずか22試合。2軍暮らしが続いたが、あきらめなかった。「僕は1軍で結果が出せなかったし、誇れる成績もない。だけど“常に全力で”と思っていた。だからファームといえども10年もやらせてもらえたと思う」。2軍では通算586安打を記録するも1軍では力を発揮できず、わずか1安打に終わった。それでも「どんなときもガムシャラでした。泥んこになって」と自身のスタイルを貫き通したことに悔いはない。
1軍初出場は14年5月24日のオリックス戦。九回1死一、二塁で代打出場し、一ゴロに倒れた。17年の最終戦、10月1日のDeNA戦で放った右前打がプロで放った最初で最後の安打。初安打は「よく覚えていない」と苦笑するが「真っすぐ一本で割り切った」と井納(現巨人)からの快音を懐かしんだ。
選手時代、チームの歯車になれなかった思いが原動力になっている。「選手の時は勝つことに貢献できなかったので、裏方に回った今は自分の力をチームに100%注ぎたいと思っている。カープの伝統を崩したくない。全力疾走や束になって戦っていく姿勢など、いい伝統は残していかないと」
根底にあるのはチームへの恩返し。多忙な日々にも「野球が好き」という気持ちは変わらない。根っからの野球少年は愛するカープのために全国の球場を飛び回っている。(デイリースポーツ・向 亮祐)
◆庄司隼人(しょうじ・はやと)1991年6月21日生まれ。静岡県沼津市出身。現役時代は右投げ左打ちの内野手。175センチ、76キロ。常葉橘高3年夏にエースとして甲子園に出場。3回戦で今宮(現ソフトバンク)を擁する明豊に延長十二回の末敗れる。09年のドラフト会議で広島から4位指名されて内野手として入団。5年目に1軍初出場。17年にプロ初安打を放つも、19年に戦力外通告を受けて現役引退。通算成績は22試合出場、20打数1安打0打点。