【野球】古巣ベイスターズ復帰濃厚な石井琢朗 求められる愛情ある鬼軍曹の役割
古巣・ベイスターズで、石井琢朗(51)に求められる役割はなんだろうか。私は愛情ある鬼軍曹役だと思う。
今季限りで巨人を退団する3軍野手コーチが、三浦大輔監督率いるDeNA復帰が濃厚といわれている。実現すれば、今年のヤクルトやオリックスのように、来季は最下位からの“下克上”Vを狙うチームにとって、大きな“戦力”になることは間違いない。
今季の三浦監督は、指揮官として鬼になりきれない部分があったと思う。私は1992年に横浜(現DeNA)を担当していたが、当時から三浦監督は誰にでも気配りのできる好青年だった。その印象はチームを指揮するようになった現在も変わらない。フロントの意向を最大限にくみ、そして選手に対しては、その自主性を重んじ、あまり厳しいことはいわないタイプだろう。
中日時代の故星野仙一監督のように、自らが厳しく指導をする人間ならば、求められるのはクッション役となる人材だろう。だが、三浦監督がそんなタイプではない以上、来季のDeNAを強くするには、野球理論があるのはもちろんのこと、時として選手に対して厳しいことが言える人材は必要不可欠だと思う。
中日を4回のリーグV、一度の日本一に導いた落合博満監督には、球界屈指の強面と言われた森繁和1軍投手コーチがいた。また、緒方孝市監督時代に広島には高信二ヘッドコーチ(現2軍監督)が、鬼軍曹役を引き受けていた。今の時代、社会問題となっているパワハラは論外だが、石井なら十分に愛情をもって叱れる鬼軍曹になれると思う。
打者として2432安打を記録、守備では遊撃手として3度、三塁手で1回ゴールデングラブ賞に輝いており、実績は申し分ない。指導者経験も豊富で広島の打撃コーチ時代の16年にリーグ優勝に貢献。ヤクルト時代の19年には村上宗孝の1軍定着に尽力し、20年には巨人の1軍野手総合コーチとしてペナント制覇に一役買っている。
石井の最大の強みは、自分の意見をしっかり述べることができる点である。担当時代、石井から野手転向の経緯を聞いたことがある。投手として入団1年目の89年には17試合に登板。1勝1敗、防御率3・56の成績を残して3年間は投手として出場していた。だが、91年目のオフに当時の須藤豊監督に「野手転向」を直訴したという。「一度は“ダメだ”と言われたけど、最後は押し通した」と話していたことを覚えている。
これからCS、日本シリーズがあり石井の古巣復帰の正式発表はまだ少し先になるのかもしれない。だが、実現すれば三浦DeNAに大きなピースが加わることになる。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)