【野球】当たり年となった20年阪神のドラフト戦略 キーワードは「必要な選手を-」

 2021年、阪神は新人3選手がチームを引っ張った。20年度ドラフト1位・佐藤輝はNPBの新人左打者の本塁打記録を塗り替える24本塁打。同2位の伊藤将は開幕から先発ローテを回り、2桁10勝をマーク。同6位の中野は遊撃のレギュラーに定着し、盗塁王のタイトルを獲得した。

 いずれも新人王こそ逃したが、特別賞を受賞。チームに欠かせない存在と言えるまでになった。なぜチームにフィットできたのか-。18年オフ、畑山チーフスカウトが統括スカウトに就任して以降、ある方針を転換した経緯があった。

 「補強ポイントに沿って選手を指名していく。チームに必要な選手を」と語っていた畑山統括スカウト。20年のチーム状況に目を向けると、福留の退団により、左の長距離砲という補強ポイントが生じた。先発陣に目を向ければ、明らかに左腕が不足していた。

 即戦力左腕の早川か佐藤輝か-。どちらを1位指名するかで意見は分かれたが、畑山統括スカウトは「左のロングを打てる選手が必要」と主張し、佐藤輝を指名。見事に矢野監督がクジを引き当てた。さらに2位で課題だった先発左腕を補強するために伊藤将を獲得。ドラフト6位ではやや送球に不安を抱えているという情報がありつつも、スピードと守備範囲の広さを買って中野を指名した。中野はプロ入り後に課題を克服し、タイトルホルダーとなった。

 上記3人だけでなく、自軍の補強ポイントに沿った選手をブレずに指名することで、獲得した選手には早い段階からチャンスが生まれる。一方、どんなに良い選手を獲得しても、ポジションが飽和状態であれば“飼い殺し”になってしまう。レギュラーが固定されていた2000年代後半、FAが戦力補強の主体だった10年代前半。新人選手に与えられるチャンスはそう多くなかったように思う。

 その流れを金本前監督が変え、スカウト陣の奮闘により今がある。19年度ドラフトでは1位から5位まで全員高校生を指名した。チームの年齢構成を分析し、大山ら1994年生まれの選手たちが主力を張っているうちに、次世代の核を作ることが狙いだった。右投手の西純、左投手の及川、中軸を打てる可能性を秘めた右の外野手・井上、左の好打者で内野手の遠藤、そして捕手・藤田。主要ポジションに土台を作る年を作ったことで、翌20年度は大卒・社会人を中心とした指名に踏み切ることができた。

 そして21年度ドラフトは西純の2学年下で次代のエース候補・森木を1位、2位&3位で即戦力左腕の鈴木&桐敷、4位は高卒で左のスラッガー候補・前川。5位・岡留は青柳タイプの変則右腕、6位・豊田は手薄となった右の外野手、7位・中川は藤田の2学年下の捕手で、刺激し合える存在だ。

 選手の特徴とチームの補強ポイントを照らし合わせれば、世代を含めてバランス良く指名した印象。大卒以上の選手に関しては、補強ポイントと合致しており、1年目からチャンスが広がっている。

 畑山統括スカウトが関西地区担当だったころ「スカウトにとって、一番ありがたいのは選手を使ってもらえること」と語っていた。スカウトが評価し、チームに必要な選手を指名する。そして現場が起用して力を発揮する。さらに高校生たちがチームの軸と呼べる選手にまで成長できるか-。来季も若い力の台頭が楽しみだ。(デイリースポーツ・重松健三)

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