【野球】阪神・近本が筒井コーチと二人三脚で目指したGG賞 考え抜いた練習が努力の結晶に
2021年、阪神の近本光司外野手が念願のゴールデン・グラブ賞を手にした。プロ入りから3年、共同通信デジタルの捕球位置を見ても、明らかに背後の打球に強くなり、捕球範囲も年々、広がっている。受賞が決定した際、背番号5はこんなコメントを残していた。
「プロ入りしてから、筒井(外野守備走塁兼分析担当)コーチと一緒に目指してきた賞でもあるので、初めて受賞することができて素直にうれしいです」
二人三脚で練習に励む姿は1年目のオフにあった。秋季練習から打球の追い方に取り組み、翌年の春季キャンプでは宜野座ドーム内で筒井コーチが投げた後方へのボールを何度も何度も追っていた。
入団1年目のデータを見ると、19年にゴールデングラブ賞を獲得した同じ左投げの大島とは決定的な違いがあった。それは後方へ飛んだ打球を捕った範囲。大島の方がフェンス際の打球をより多く捕球していた。
バンテリンドームと違い、強い浜風が吹く甲子園を本拠地としているハンディはあったが、近本も筒井コーチもそれを言い訳にはしなかった。「大島を超えられるようになってほしい」と語っていた同コーチ。そのための練習法も2人で編み出していった。
前述した手投げだけでなく、二塁ベース付近からセンター後方に低く、鋭い球を打つ。近本はバットに当たった瞬間に落下地点を即座に判断し、一直線にスタートを切っていた。「打球に対して一直線に、というような頭で考えるよりも、とにかく体に染みこませようと。だから自由に動かせて、それを体で覚えさせる」(筒井コーチ)。20年シーズンでは打球に対しての追い方も変わった。ルーキーイヤーは背後の飛球に対して、やや回り込むような形でラインに入っていたが、同年はスタートを切った直後から飛球のラインに入り、スムーズに追えるようになっていた。
コンマ数秒のロスがなくなり、今まで追いつけていなかった飛球に対しても対応できていた。簡潔に“守備範囲が広くなった”という印象は今年、さらにレベルアップした。データを見ても捕球地点の分布は歴代のゴールデングラブ賞受賞者と比較しても遜色はない。そして授賞式では新たにこんな練習法も明かしていた。
「パッと判断してどこに誰がいるとか、風はこうで打球はこうで、(投手やスタッフの)間をすり抜けて捕ったり。逆にスタッフの人に邪魔をしてもらって、視界に入った時でも打球を捕る、どんな体勢でも捕るっていう練習をしていた」
試合前練習、外野は投手陣の練習にも使われる。かなりの密集地帯となっている状況で、フリー打撃の打球を追っていたという。
現状に満足せず、さらなる高みを目指して歩み続けた3年間。ただ打球を追っていただけではない。自分で何が必要かを考え、筒井コーチと取り組んできた成果が、栄えあるゴールデン・グラブ賞だった。