【野球】鈴木誠也のキャッチボールに安仁屋氏の第一印象 若かりし黒田博樹氏と同じだった
広島からポスティングシステムを使って米大リーグ・シカゴ・カブスと5年8500万ドル(約101億3000万円)といわれる超大型契約を結んだ鈴木誠也外野手が18日(日本時間19日)、アリゾナ州メサで入団会見を行った。その姿に9年前にデイリースポーツ評論家の安仁屋宗八さんが放った言葉が思い出された。
忘れもしない2013年1月17日。阪神・淡路大震災の犠牲者に黙祷をささげ、マツダスタジアムに向かった。当時広島カープOB会長でもあった安仁屋さんと広島の新人合同自主トレを見学するためだ。
まだ高校生の鈴木は、本拠地初練習ではりきっていたのだろうか。キャッチボールの遠投で相手の頭上を越え「ゴツン」と観客席に飛び込む“暴投”を何球も投げていた。強肩ルーキーに安仁屋さんは「超一流になるかすぐダメになるかだな」と笑いながら第一印象を語ってくれた。
この言葉で思い出すのが、安仁屋さんが2軍監督時代に入団した黒田博樹氏の印象だった。「球は速かったけどコントロールがなかった。超一流になるかすぐにダメになるかと思った」という。新人時代の2軍戦で2桁失点しても投げさせ続けたこともあった。
期待の右腕はつぶれることなくカープのエースに成長。FA権を行使して海を渡りメジャーで5年連続2桁勝利など7年で79勝を挙げた。そして日本球界復帰後は古巣カープの25年ぶり優勝に貢献。日米通算203勝で名球会入りを果たし、背番号15は永久欠番になるほどの活躍を見せた。
安仁屋さんは鈴木のキャッチボールを見て同じ言葉を発した。そして、本拠地初練習当日の評論には「鈴木の肩には驚かされた。コントロールはいまひとつだが、グッと伸びる力強い球を投げていた。肩だけならすぐに1軍にいけるくらいだ。高校時代はピッチャーだったらしいが、投球フォームを見ていると、ピッチャーでもいけるんじゃないかと思う」と記している。
広島ではルーキーイヤーから1軍出場を果たし順調に成長。強肩を生かした外野の守備力はもちろん、6年連続3割25本塁打以上の打撃力の持ち主は、日本人野手のメジャー最高額の5年100億円超えという大型契約を結んだ。
安仁屋さんが強肩に驚いた日、鈴木は報道陣に囲まれると「無理するなと言われるんですが、僕自身は全然、無理していません。同期は甲子園に出た人ばかり。僕は出ていない。人より練習するのは当たり前」と言った。
同期にはメジャーで二刀流として活躍するエンゼルス・大谷翔平もいる。すでに超一流選手として成長し海を渡る鈴木は、安仁屋さんが抱いた第一印象通り「超一流」への階段をまだまだ駆け上がる。(デイリースポーツ・岩本 隆)