広島の元選手 比嘉寿光氏の今「穴があいたとき、サポートできる形を」球団編成部で奮闘
現役時代に注目を浴び、今も球界で奮闘を続ける元選手を紹介する「裏方はスゴ腕」(随時掲載)。今回は広島の編成部・比嘉寿光氏(41)を紹介する。2軍戦などを視察し、トレードなどで選手を獲得するため性格面などを細かくチェック。阪神などで活躍した鳥谷氏やヤクルト・青木ら早大時代の同期から学んだことを胸に刻み、真摯(しんし)に仕事に取り組んでいる。
◇ ◇
チームの戦力を整備することが今の仕事だ。比嘉さんは現役時代と変わらない勝利への思いを強く持ちながら、グラウンドへ足を運んでいる。
「チームで勝ちたいという思いが強い。負けた日は自分の気持ちが暗いなと思うし、勝った次の日は新聞を見るのも楽しみ。個人的にはそういうところをモチベーションにしています」
03年度ドラフト3位で早大から入団。2年目の05年9月19日・横浜戦(横浜)では代打で初打席初本塁打を放つ華々しいデビューを飾ったが、以降は故障などに苦しみ09年限りで現役を引退した。
引退後は球団広報などを務め、15年から編成部に所属。主な仕事はトレードなどでチーム力をアップさせること。ウエスタン、イースタンの両リーグの視察など忙しい日々を過ごしている。
18年オフには福井とのトレードで楽天から菊池保を獲得。「ずっと見ていて彼が一番光っていた。球に力がある」。右腕は広島移籍後、中継ぎとして昨季まで毎年30試合以上に登板してきた。
スカウティング時の信条は細部にまで目を凝らすこと。「カープは輪を大事にする。その輪に溶け込めるような人間性を持っていないといけない」。技術はもちろん、練習中の表情や準備などの観察にも力を入れ、性格なども分析していく。「一生懸命やるのは当たり前。どれだけ準備をしているかとか、どれくらい周りが見えているかとかも見ています」と力を込めた。
裏方に回り今年で13年目。同級生の活躍に刺激を受けてきた日々だ。早大のチームメートで、阪神とロッテで活躍し昨季限りで現役を引退した鳥谷氏がその一人。「彼との会話が増えれば増えるほど僕の仕事に全て生きてきた」と振り返った。
同氏は40歳までグラウンドに立ち続けた。大学時代と同様に、年齢を重ねてもストイックに野球に打ち込む姿などを見たり、聞いたりしてきた。
「目標設定とかは野球だけじゃなくて、社会でも通じること。しっかり自分の中でプランを持ってやれている人は、その世界で成功を収めているんだなと。自分もそうでありたい。(早大の同級生の)ヤクルトの青木もそうだけど、そういう同級生や仲間がいるのが僕の中では財産です」
開幕ダッシュに成功したシーズンは始まったばかり。長い戦いでは何が起こっても不思議ではない。「穴があいたとき、すぐにサポートできる形をとっておきたい」。4年ぶりのリーグ制覇へチームをしっかりと支えていく。(デイリースポーツ・市尻達拡)
◇ ◇
比嘉さんの長女・もえさん(広島・観音中3年)=AS広島=は、今年3月に発表された世界選手権(6~7月・ブダペスト)に臨むアーティスティックスイミング(AS)日本代表に、史上最年少の14歳での代表入りを果たした。同選手権では東京五輪代表の吉田萌(ザ・クラブピア88)とペアを組み、テクニカルルーティンのみにエントリーする。
当初は28年のロサンゼルス五輪出場を目標にしていたが、24年のパリ五輪出場も視界に入ってきた。比嘉氏は「正直、こんなありがたい話はないです。自分が親に野球に熱中させてもらい、一生懸命やっていたことが、実は親孝行だったんだなと、今になって気が付きました。そう考えたら、彼女は親孝行していますよ」と、優しい目で語った。