【野球】山口俊、梶谷、井納の巨人FA移籍は単なるDeNAの戦力ダウン招くだけ ベテラン記者の嘆き
山口俊(34)、梶谷隆幸(33)、井納翔一(36)の巨人へのフリーエージェント(FA)移籍は、単なるDeNAの戦力ダウンを招くだけで終わってしまうのだろうか。
開幕から首位争いこそしているが、最近の巨人は菅野智之、坂本勇人、そして1番打者として打線をけん引してきた吉川尚輝ら主力の相次ぐアクシデントで苦戦を強いられている。
かつて巨人といえば、豊富な資金力と巨人ブランドを背景に、FAで落合博満、清原和博、工藤公康ら各球団の主力選手を獲得し、ペナントレース優勝を果たしてきた。そのため、金で優勝を買う金満球団と揶揄(やゆ)する声もあった。
だが、ここ10年は、巨人のFA戦略は成果を上げていると言いにくい。特に、目を引くのがDeNAからの移籍組の存在だろう。
2017年に巨人のユニホームを着た山口俊は確かに活躍した。15勝4敗、188奪三振、勝率・789で最多勝、最多奪三振、最高勝率の三冠に輝き、ペナント制覇の原動力になった。
だが、チーム編成に大きな爪痕を残すかのように、オフに在籍1年でポスティングシステムを利用してMLBに移籍。昨季途中から巨人に復帰したが、15試合に登板して2勝8敗の成績で、かつて活躍した面影はなくなっている。そのまま巨人に在籍していれば、また違った結果になっていたかもしれない。
今季は1月に新型コロナウイルスに感染したこともあり2軍スタート。一度は1軍に昇格したが、現在は再び2軍降格している。現状ではあまり原巨人の戦力とはなっていないだろう。
昨年、DeNAからFA移籍してきた井納、梶谷コンビも今のところチームへの貢献度は低い。井納は昨季、開幕時点ではローテションの一角を占めると期待されたが、終わってみれば登板はわずか5試合(1先発)。0勝1敗、防御率14・40という成績に終わった。今季も開幕から2軍暮らしが続き、先発争いの若手投手陣の後塵(こうじん)を拝している。
外野に加え、遊撃や二塁を守った経験もあるだけに、坂本や吉川が復帰するまでの代役を務められる可能性があった梶谷は、度重なる負傷に苦しめられている。
昨季は61試合に出場し、打率・282、4本塁打、23打点と期待される結果は残せなかった。今季は昨年10月に腰椎椎間板ヘルニアの手術を受け、復帰に向けてリハビリ中だったが、今度は左半月板の修復手術することが判明。年内の復帰は難しい状況となっている。
確かに巨人が同一リーグの選手をFAで獲得する場合、その相手チームの戦力を低下させるという意味を含んでいる。だが、戦力として考えているからこその獲得である。このまま、山口俊、井納、梶谷のDeNAからのFA移籍トリオが埋もれてしまっては、単なるライバルチームに戦力をもぎ取るだけに終わってしまう。そんなFA移籍では、あまりにも悲しすぎる。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)