【野球】高校野球に見たスポーツマンシップの浸透度
「宣誓!我々選手一同は、スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と戦うことを誓います!」
7月31日に高校野球の西東京大会決勝が行われ、8月6日から甲子園で熱戦を繰り広げる全49代表校が出そろった。
冒頭の文章は、私が高校野球に明け暮れた三十数年前の開会式で『定番化』していたフレーズだ。昨今の選手宣誓は各校の主将が独創性に富んだ表現を用い、過去の宣誓と似通わない工夫をしたりと、かつて主将を務めた一人として感心するばかりなのだが、今年も数多くの地方大会で、スポーツマンシップに感動させられる場面があった。
タイブレークにもつれ込んだ兵庫大会決勝。延長十四回、勝ち越し打を放った社の一塁走者が後続の安打で三塁を回った際、足がつった。すると神戸国際大付の三塁手がすかさず倒れ込んだ選手の足を真っすぐに伸ばし、治療に当たった。
奈良大会決勝では21-0で甲子園進出に向けてあとアウト1つに迫った天理がタイムを取り、内野陣がマウンドに集まった。「3アウト目を取ってもマウンドに集まらず、すぐに整列しよう」と、選手たちが話し合って決める光景があった。
昨年の甲子園大会で準優勝した強豪・智弁学園を準決勝で破りながら、新型コロナウイルス感染の疑いでベンチ入りメンバーが12人も入れ替わり、ベストメンバーで戦うことができなかった相手校・生駒に対する気遣いと敬意。中村良二監督は「周りのことを考えてやれるようになったんだな」と、野球を通して培った人としての成長に涙した。
3年生にとっては負ければ終わりとなる高校生活最後の大会。全力を尽くし、勝負と結果にこだわる中で、相手を思いやる感情を抱き、行動に移せる姿は実に尊い。今年もコロナ禍と猛暑の中で行われる選手権。球児たちの健闘を祈りたい。(デイリースポーツ・鈴木健一)