【野球】ヤクルト・村上の特例抹消であってもいい「配慮」プロ野球が記録のスポーツだからこそ
ヤクルト・村上宗隆内野手が6日、特例2022対象選手として出場選手登録を抹消された。倦怠感を訴えたためでPCR検査は陰性だったことを試合後、高津監督が明かした。これにより2019年の開幕戦から続いていた連続試合出場は503試合で、球団記録を更新し続けていた4番での連続試合出場も360で止まった。
記者は過去、2人の偉大な記録が止まる瞬間を目の当たりにしてきた。1人は1492試合連続フルイニング出場の世界記録を達成した金本知憲氏。2010年、右肩を痛めた影響でスローイングが困難になり、最後は自ら真弓監督に直訴して記録に終止符を打った。
もう1人は鳥谷敬氏。2018年5月、ルーキーイヤーから続けてきた連続試合出場が1939試合で止まった。その年、開幕から不振にあえぎ、打率・143と低迷。首脳陣も何とか出場の道を探ったが、ゲーム展開上、ビハインドの展開で起用する場面はなかった。その際、鳥谷氏は「いつかは止まる記録ですから。いい時も、悪い時も、ケガをした時も試合に使ってもらった監督の方たちに感謝をしたい」と率直に歴代指揮官に感謝の思いを口にしていた。
厳しい生存競争が繰り広げられるプロ野球の世界。力を出せなければ、結果を出せなければ出場機会は失われる。金本氏も鳥谷氏も記録を続けられたのは周囲を納得させるだけの数字を出し、そのための準備を怠らなかったから。そして記録が止まる時のエピソードを思い返しても、自らが納得した形で終止符を打ったように思う。
そしてプロ野球は記録のスポーツとも言われる。先人達が残してきた大記録を新たに塗り替える時、その選手は大きなスポットライトを浴び、再び歴史がひもとかれる。直近では村上が放った5打席連続本塁打の偉業が挙げられ、過去の記録と一緒に快挙をたたえられた。
仮に今後、村上が復帰して試合に出続ければ数年後、もしかしたら鳥谷氏の記録、衣笠氏の記録まで届くかもしれない。それが今回、コロナ禍の影響で途切れてしまった…という不本意な形で終わっていいのだろうか。コロナ禍のプロ野球は隔離措置など厳格にルールで定められ、運用されている。どれだけ注意しても感染は防げないという流れになっており、村上もチームのことや色んなことを考えて自己申告に至ったのだと想像できる。
だからこそ例えば「連続記録は特例抹消期間を除く」といった配慮が公式記録にあってもいいのではと思う。きっと村上は今後もプロ野球の歴史を数多く塗り替えていくだろう。それを目の当たりにするたび、子供たちがプロ野球選手を目指すきっかけになるかもしれない。歴史がひもとかれ、オールドファンたちも先駆者の時代を語り合えるかもしれない。コロナ禍の時代、記録の扱い方にも一考の余地があるのではないだろうか。(デイリースポーツ・重松健三)