【競馬】高齢ファンの多いフランス競馬 若年層を取り込めるかが鍵に
アルピニスタの勝利で幕を閉じた先日の凱旋門賞。過去最多となる4頭でパリロンシャンに乗り込んだ日本勢だったが、タイトルホルダーの11着が最高着順。またも悲願達成とはいかなかった。現地に足を運んで取材した記者は、馬券的に厳しいと思って無印にしつつも、実際に負けるとやはりガックリ…。馬場が違い過ぎてもはや別競技だという声も聞こえるが、記者もその意見に賛同したい。
海外の競馬場を訪れるのは今回が初めて。きらびやかなスーツやドレスをまとった高貴な紳士淑女がたしなんでいる…そんな勝手なイメージを持っていたが、それは一部だけの話だった。買った馬券を握りしめ、声、ヤジを張り上げる馬券オヤジがたくさんいたり、友人らとああでもないこうでもないと予想をしていたりと、割と日本と通じるところが多かった印象。だが、決定的に違うと感じたのは年齢層だ。どうやら、この点に関しては、日本のJRAにあたるフランスの競馬統括組織フランスギャロも頭を悩ませているようで…。
日本では近年、有名若手女優らを起用したテレビCMを打ち、さらには「ウマ娘」などのスマホゲームもブームに。競馬場はピリついた鉄火場という雰囲気ではなく、『競馬=ギャンブル』というイメージは一新され、一気に若年層が増えている。一方で、フランスは意外と年配の観客が多いように思えた。
フランスギャロのクレマン・ポルシェ氏の話でも、「お客さんは50歳以上が多い」とのこと。「競馬場でイベントをやるなど新しいことをして、若い人に来てもらいたいんですが…。アングロサクソンの人々には賭けの伝統が昔から根付いています。フランスの競馬につきまとう古いイメージを変えて、若い層を増やしたいです」と話していた。馬券売り上げは現金とネットの比率が8対2だそうで、ネットが8割を超え、現金が2割以下のJRAとは正反対の割合。これも年齢層が一つの要因になっている。
さて、その打開策は-。聞くと、どうやら馬主が鍵を握るという。「フランス競馬では、サッカー選手のアントワーヌ・グリーズマンや、バスケットボール選手のトニー・パーカーが馬主をやっています。他にF1レーサーもやっているので、そういうのを広めていきたいですね。伝統的なものから、少しずつスポーツのイメージをつけていければ」。近年の日本競馬界で言えば、演歌歌手北島三郎氏が所有したキタサンブラック、元大リーガー佐々木主浩氏が所有したシュヴァルグランなどの活躍。国民にとって身近な存在をきっかけに、徐々に関心を引き寄せていくのはありだろう。
ちなみに、昨年の仏G3・ミエスク賞ではパーカー所有のマングスティーヌ(Mangoustine)、グリーズマン所有のソープ(Txope)のワンツー決着だった。“異種球技対決の場外戦”のような感じで、見ている側もなんだかワクワクする。
また、欧米は日本とは違い、牡馬の引退→種牡馬入りが早く、逆に牝馬の現役生活が比較的長いのも特徴的。牡馬の絶対的存在が出てきても、その輝きは一瞬だ。「チャンピオンホースを我々が押し出して、若い人に知ってもらえるように。スポーツに近いという雰囲気を感じてもらいたいですね。トレヴ、エネイブルは長く現役生活を続けたので、知ってもらえる期間も長かった。今ならグランドグローリーでしょう」と、同氏は6歳牝馬のG1ホースをイチ押しする。
グランドグローリーは昨年、ジャパンCに参戦して5着に善戦。先の凱旋門賞でも5着に食い込んでいて、まだまだ一線級の力を示している。次走には再びジャパンC挑戦を表明しており、これでもし勝つとなれば、昨年末に繁殖馬セールに出された経緯も相まって、フランスの若い世代にも熱が伝わることだろう。
どこかお高いイメージがあったフランス競馬。若年層を取り込むことには賛否両論あるとは思うが、コンテンツが長く続くには世代の循環は必要不可欠なものだ。今年のジャパンCはフランス競馬の未来を背負う馬が参戦する、という見方をすれば楽しみ方も増える。“若返り”を図るフランス競馬がこの先、どう変遷していくのか注目したい。(デイリースポーツ・山本裕貴)