【野球】「歯がゆいんよ」自らノックでお手本を示す64歳 阪神・岡田新監督の原動力「阪神を強くしたい」

 ブルペンで投球を見守る岡田監督(撮影・飯室逸平)
3枚

 昨夜、スマホで阪神のキャンプ中継をぼんやり見ていると思わず目を見開いた。安芸のサブグラウンドで自らグラブを装着してノックの打球を捕っていた岡田彰布新監督。御年64歳、間もなく65歳の誕生日を迎える。もう驚き以外の何物でもなかった。

 還暦をはるかに超え、今オフから勝負の世界に再び身を賭した岡田監督。自らノックでお手本を示し、甲子園での秋季練習ではバットを手に打撃のヒントを若い選手に授けている。そんな精力的に動き回る原動力となっているのは、きっと言葉となって吐露したあの思いだと感じている。

 「ほんまに、歯がゆいんよ」-

 2019年から21年まで3年間、岡田監督の担当としてつかせてもらった。ゲームの評論を聞いていく中で、何度もこの言葉を聞いた。タイガースを愛する気持ちは誰よりも強い。強くあってほしいと願っていた古巣が2005年を最後に、優勝から遠ざかっている事実に忸怩たる思いを抱えていたように思う。

 現役時代晩年、オリックスへ移籍した際には「これからは阪神ファンとして」と心境を明かした言葉はファンの間で今も語り継がれている。ここ数年のタイガースを見て「優勝できる」「もっと勝てる」「もっと強くなれる」と語っていた岡田監督。ゴロを捕球する際のグラブの位置、打つポイントなどは評論家時代に指摘していたものだった。当時はチームへの配慮もあったが、ユニホームを身にまとい、責任ある立場となった今、積極的にコミュニケーションを取り、選手が成長するためのアプローチをかけている。

 そして戦術、戦略眼。最も印象に残っているのが2021年7月11日、甲子園で行われた阪神-巨人戦。宿敵に0-1の完封負けを喫し、当時2位の巨人に1・5ゲーム差へと迫られた一戦だ。

 試合後、ゲームを振り返る中で0-0の八回が焦点となった。無死二塁から北村に1球で送りバントを決められ、続く大城にはカウント0-2から外角低めの変化球で勝負し、三遊間を破られた。

 「簡単に送らせる場面やないんよ。ボールで入って相手の出方を見る慎重さがあってよかった。0-0の八回よ。大城の場面も、三塁走者がギャンブルスタートのしぐさを見せとった。まだボールを3つ投げられるし、バットの形状は根元の方が細いやろ?前に飛ばさせないために、時間をかけて最後に内を突くとか選択肢はあったよな」

 「やるべきことをやってない負けは悔いが残る」と指摘した上で「相手に考えさせる。それが長丁場の戦い、ペナントレースでモノを言う。これだけ貯金があるんやから。思い切ったことをやれる状況なんやから」と古巣にメッセージを送っていた岡田監督。評論家時代、誰よりも真剣にプロ野球と向き合ってきた。ゲームを見ている際は、隣にいるこちらにも独特の緊張感が伝わってきた。2023年シーズンで18年ぶりの優勝を目指す阪神。新指揮官の情熱が2006年以降、計8度の2位を記録するなど惜しくも届かなかったVへの壁をぶち壊すかもしれない。(デイリースポーツ・重松健三)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス