【野球】阪神 正捕手固定のメリットは?かつて城島健司が明かした「黒星を白星に変えるのが正捕手」

 阪神の岡田新監督は就任後、正捕手を梅野で固定する方針を語っている。「捕手もある程度固定というかやっぱり、レギュラーとしてお前がレギュラーや!!という感じで使ってあげないと」と指揮官が言えば、梅野自身も「一生懸命、結果にこだわって監督に信じてもらえるようにやるべきことをやりたい」と意欲的だ。

 プロ野球では「正捕手を固定できるチームは強い」という定説がある。ゲームコントロール、配球の引き出しなど、さまざまな要因が語られている中で、阪神担当時代に取材した城島健司(現ソフトバンク球団会長付特別アドバイザー)の言葉が今も“最適解”として印象に残っている。

 城島はダイエー&ソフトバンクで一時代を築き、米大リーグ・マリナーズへ移籍。2010年から阪神でプレーした際、「どんな状況でもマスクをかぶり続けるのが正捕手の役目」と語っていた。その理由を聞くと、次のような答えが帰ってきた。

 「プロ野球はどんなチームでも50勝はするし、50敗もする。残りの44試合をいかに勝つかで優勝が見えてくる(当時は144試合制)。その44試合を勝つためには、50の負け試合を一つもムダにしてはいけない」

 具体的には大量ビハインドで中盤までに勝負が決した試合で「こういう球を打てるか、このコースにどう対応してくるかを見る」「次の試合で相手が迷うようなリードをする」「徹底的に弱点を攻めて相手打者の調子を崩す」などと語っていた城島。これらの考えを実践していく中で最も印象に残ったシーンが2010年8月3日の巨人戦だ。

 東京ドームでの首位攻防戦、終盤で敗色濃厚となる中、巨人・阿部に対して10球近く続けて、これでもかとインサイド勝負に打って出た。阿部もファウルで逃げながら、最後は狙い澄ましたように体を開きながら右翼ポール際へダメ押しの一撃を放った。

 試合後、城島は開口一番、被弾した安藤について「安ちゃんは悪くない。すべては次、勝つためにやったこと」と明かした。その上で「9月に入ればもっと厳しい戦いになる。黒星を白星に変えるのが捕手の仕事」と説明したのを覚えている。

 この年、惜しくも1勝差で優勝を逃したが、エース・能見が故障で離脱するなど火の車だった投手陣を引っ張った城島。他にもフォークのサインに首を振った西村のもとへ歩み寄り「周りの野手が打たれても納得するボールは?直球ではないだろ?」と諭すなど、野手と投手の信頼関係を重要視し、打線の援護を導き出すような配球論もよく語っていた。

 2012年の引退会見で涙をこらえきれなくなったのは、リリーフ投手について話題が及んだ時。「現役生活で一番の思い出は?」という問いに「自分がマスクをかぶって受けた投手が一番の宝物。勝ちがつかなかったり、競った場面でなくとも、明日のために一生懸命投げてくれた投手たちに・・・捕手として・・・感謝したいです」と思いを吐露した。打たれると分かっていても要求通りに投げてくれたピッチャー、自分の勝利よりもチームの勝利を優先してくれたピッチャー。城島に正捕手としての矜恃があったからこそ、この言葉が出てきたのだろうと思う。

 その背番号2を捕手として受け継いだ梅野。来季、18年ぶりとなるリーグ制覇へ。岡田監督の下でどんな正捕手像を見せてくれるのだろうか-。(デイリースポーツ・重松健三)

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