【野球】楽天・吉野 昨年ドラ1が今秋の指名戦略に感じた自身への期待 高卒2年目の飛躍へ
10月20日に行われたプロ野球ドラフト会議。1年前に楽天からドラフト1位指名を受けた吉野創士外野手(19)は、複雑な思いでその模様を見つめていた。
「今年は『投手(中心)でいく』って記事に書いてあって。でも当日にならないとわからないですし」
自分と同じ外野手、もっと言えば右打ちの外野手の指名があるのかどうか。「戦いじゃないけど、しのぎ合いがプロの世界」。ライバルが増えることへの覚悟はあったが、どうしても結果が気になった。
実際に投手中心の指名となり、育成選手を含めて指名した10人に外野手はゼロ。「それだけ(球団が)自分を気にかけてくれているのかなと。期待されていると感じた」と身が引き締まった。
昨秋のドラフト会議。市和歌山高・小園、高知高・森木、ノースアジア大明桜高・風間の「高校生投手ビッグ3」が注目される中、高校通算56本塁打を誇る昌平高のスラッガー・吉野は楽天から単独1位指名を受けた。「思ったより早い順位で呼ばれた」。本人も驚きを隠せないサプライズ指名であった。
ただルーキーイヤーは出だしから苦しんだ。1月の新人合同自主トレでいきなり腰に違和感を覚え、別メニュー調整。「思うように野球ができなかった」。もどかしさを感じながらプロ野球人生をスタートさせた。
懸命に遅れを取り戻し、4月のイースタンリーグでようやく実戦デビュー。だが「期待に応えたいという思いがあり、空回りした」。なかなか結果を残せず、苦悩の日々を過ごした。終わってみればイースタンで48試合に出場し、打率・197、1本塁打、8打点。「1年目とかに関係なく、成績も伸ばしていけたら良かった」と悔しさをにじませた。
大きな壁にぶち当たったプロ1年目。自身の大きな課題としているのが体格面だ。186センチと長身だが線が細く、現在の体重は78キロ。特に「他の選手と比べたら全然薄いんで、もうちょっと分厚くしたい」と上半身がコンプレックスだという。
目標は今から10キロ増の88キロ。「1日でも早くプロの体を持てるようにやっていきたい」。食事も含めウエートトレーニングにも精力的に取り組み、このオフは肉体改革を推し進める。
指揮官からも期待の言葉をかけられた。秋季キャンプ序盤、石井一久監督(49)とわずかな時間ではあったが会話する場面があった。
「プロ野球生活はあっという間に過ぎ去るから、プロ意識を持って1日1日を大切に過ごしなさい」と金言を授かり、「その言葉を胸に自分も飛躍したい」と力を込めた。
来季は高卒2年目。同じ高卒入団のヤクルト・村上、オリックス・紅林らは2年目のシーズンで頭角を現した。
右打ちの外野手は手薄なチーム事情がある。「スタートダッシュから自分のできることをアピールして、1軍の切符をつかみたい」。イヌワシ軍団の未来を担う、未完のスラッガーはプロの階段を一歩ずつ上がっていく。(デイリースポーツ・滋野航太)