【スポーツ】どんな結果でもW杯カタール大会後に、第二の城彰二氏を出してはいけない

 どんな結果に終わってもワールドカップ(W杯)カタール大会後に、第二の城彰二氏(47)を出してはいけない。

 7大会連続で出場している日本は27日のコスタリカ戦(アフマド・ビン・アリ)に0-1で敗れ、2大会連続の決勝トーナメント進出が微妙な状況になっている。現地12月1日(日本時間2日4時)に行われる第3戦(ハリファ国際)の相手は無敵艦隊と呼ばれる、FIFAランク7位のスペイン。日本は初戦(23日・ハリファ国際)で過去4回の優勝を誇るドイツに2-1の逆転勝ち。このジャイアントキリング(大番狂わせ)に日本国内外が大盛り上がりをみせていたが、コスタリカに負けたことで、森保一監督(54)やイレブンに対して一転逆風が吹き荒れている。

 世界を見回しても、過激なサッカーファンは多い。27日に優勝候補の一角、ベルギーがグループリーグ第2戦(アル・トゥママ)でモロッコに0-2で敗れた。この敗戦を受け、ベルギーの首都・ブリュッセルの中心部では一部のファンが暴徒化。100人以上の警察官が動員され、少なくとも10人以上が逮捕されたとの報道がある。また、1994年アメリカW杯では、1次ラウンドで敗退したコロンビア代表のDFアンドレス・エスコバル(当時27歳)が地元に戻り、アメリカ戦でのオウンゴールに怒った暴漢に射殺された事件も起きている。

 日本でもW杯の試合結果に怒ったファンが暴挙に出たことがあった。1998年6月29日。W杯フランス大会を終えて帰国した代表FW城彰二氏が、成田国際空港のロビーで心ないファンから水を浴びせられた。この大会を取材していた私は、日本代表から一足早い便でフランスから帰国。ロビーでイレブンの登場を待ち受けていた。1勝もできなかったことを非難する声は多かったと思う。そんな騒音の中、私の目に飛び込んできたのは口の開いたペットボトルを投げつけられ、その口から勢いよく飛び出した水でスーツをぬらした城氏の姿だった。

 エースストライカーとして期待されながら、3試合で1点も挙げられなかった城氏は“A級戦犯”として扱われていた。だが、1人の選手に怒りの矛先を向けるのは間違っている。その考えは当時も今も変わらない。代表選手である以上、国の威信を背負っている。確かに期待を裏切られたら失望もするだろう。失望が怒りに変わるのもある程度は理解できる。だが、負けたくて負けるチームなどない。また、ミスを犯したくて犯す指揮官も選手もいない。

 成田空港を後にした日本代表が成田市内のホテルで帰国会見を行う前、城氏と交わした短い会話を今も忘れることができない。彼は自分に言い聞かすように、こうつぶやいた。「俺は水をかけられてすんだけど、外国の代表なら殺されていたかもしれないね」と-。

 アスリートに恐怖心を与える行為は絶対に間違っている。そんな暴挙は二度と見たくない。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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