【スポーツ】今W杯、遠藤保仁の“コロコロPK”があればクロアチア戦の結果は変わっていたのか

 PK戦で敗れがっくりの南野拓実、吉田麻也ら=5日(撮影・金田祐二)
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 FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会でのペナルティーキック(PK)戦決着に、元日本代表のヤットこと遠藤保仁(42)=磐田=の“コロコロPK”が頭に浮かんだ。実際の試合で何度かみたが、コロコロPKは相手GKの動きをぎりぎりまで見定め、逆を突いて低速のゴロで流し込むPKのことで、相手GKの戦意をそぐには十分な必殺技ともいえる。

 今大会は決勝トーナメントでのPK戦が注目を集めている。日本も決勝トーナメント1回戦(5日・アル・ジャヌーブ)のクロアチア戦でPK戦までもつれながら敗退。悲願のベスト8進出をあと一歩で逃した。失敗した責任を感じて涙を流した南野拓実(27)、三笘薫(25)、主将の吉田麻也(34)の姿に、日本中がもらい泣きしただろう。

 涙したのは日本だけではない。現在、FIFAランキング1位で、優勝候補の筆頭だったカナリ軍団・ブラジルも準決勝進出を懸けたクロアチア戦(9日・アルヤラン・エデュケーション・シティ)でPK戦の末敗れ、夢を打ち砕かれた。延長前半のアディショナルタイムで王様・ペレの持つブラジル代表の最多得点77に並ぶゴールを決めたネイマール(30)でさえ、同点となりPK戦5番手のキッカーとして出番を待っていたが、その前に敗戦が決まってしまい試合後、号泣した。同僚のチアゴシウバ(38)に肩を抱きかかえられてロッカーに引き上げるシーンは世界中に配信されたほどだ。

 また、優勝候補の一角だったオランダもベスト4をかけたアルゼンチン戦(9日・ルサイル)でPK戦の末に敗れている。

 キッカーがGKとわずか12ヤード(約11メートル)の地点でボールを置いて蹴るPKは、100%に近い確率で成功するというイメージがある。ところが、PK戦での成功率は、スポーツ心理学の専門家チームが1976年から2020年のW杯、EUROなどの主要大会を分析した結果、約70%だという。今大会ではその確率は大幅に下がっているだろう。決勝トーナメント1回戦でモロッコと対戦(6日・アルヤラン・エデュケーション・シティ)した無敵艦隊・スペインは3連続で失敗している。

 かつて日本代表でプレーしていた選手の何人かにPKについての話を聞いたことがある。彼らの中には「普通、キーパーはPKになれば左右のどちらかに飛ぶ。そう考えると真ん中に蹴れば、間違いなく入ると思う。でも、万が一、真ん中に蹴って止められれば後悔する。上にふかすこともあるしね。それがプレッシャーになり、左右のどちらかを狙って蹴ることになる」という意見を口にした人間もいた。よほどのメンタリティーがなければ勝負がかかる場面で、真ん中に蹴ることは難しいということだろう。

 現行のルールでは、助走中のフェイントは認められているが、PKを蹴る直前に止まるなどのフェイントは警告の対象となる。そのため、ギリギリまでGKの動きを見定めるコロコロPKはフェイントとみなされるリスクもあり、難しい“技術”が求められるだろう。だが、ヤットがコロコロPKが許される状況下で代表にいれば、クロアチア戦の結果は変わっていたかもしれない。(デイリースポーツ・今野良彦)

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