【野球】日本プロ野球界 FA移籍選手の安易なマネーゲームを慎むべきではないか
日本プロ野球界はFA移籍選手の獲得に際し、安易なマネーゲームを慎むべきではないのか。金額高騰は今後の日本プロ野球界に悪影響を及ぼしかねない。
プロ野球12球団の契約更改交渉がほぼ終了した。史上最年少&令和初の三冠王、ヤクルト・村上宗隆(22)が年俸6億円で更改するなど話題は尽きない。だが、同時にFA権を行使して移籍する選手の年俸高騰も注目を集めている。
日本ハムの近藤健介(29)は6年総額40億円でソフトバンクに移籍。今季の年俸は1億9500万円に比べ大幅アップを勝ち取った。そのソフトバンクから海外FA権を行使してメッツ入りした千賀滉大(29)の契約は、20日時点の為替レート(1ドル=136・78円)に換算して5年7500万ドル(約102億5850万円)、1年平均1500万ドル(約20億5170万円)にも達するという。
千賀を獲得する前の時点で、メッツの年俸総額がメジャー史上初の3億ドル(約410億3400万円)を突破している。千賀の年俸を加算すれば、来季の年俸総額は約3億3500万ドル(約458億2130万円)にも膨れあがる。大富豪で知られるスティーブ・コーエンオーナー(66)だからできる補強だろう。メッツは100億円を超すぜいたく税を支払うことになるだろう。MLBのぜいたく税は、30球団の戦力の均衡を図るため、大金を投じる球団への“罰金”として設定されている。一定額を超えた場合に科されるいわゆるぜいたく税は4段階で一番下の2億3000万ドル(314億5940万円)から2億5000万ドル(約341億1950万円)の場合は超えた額の20%、2年連続では30%を支払わなくてはいけない。また、最高ランクの2億9000万ドル(約396億6620万円)以上の場合で80%、2年連続では90%にまで跳ね上がる仕組みだ。
だが、日本の場合、各球団の年俸総額の規模はMLBに比べ小さい。2023年度の総年俸は確定していないが、今季の年俸総額は1位のソフトバンクで62億1120万円、2位・巨人が45億5090万円、リーグ連覇を達成したオリックスは27億5315万円の9位だといわれ、現段階ではぜいたく税導入の議論はない。
私はプロ野球担当記者として中日時代の1990年の中日・落合博満氏(69)などの参稼報酬(年俸)調停を取材したことがある。当時の落合氏は2億7000万円を希望していたが、結局は2億2000万円に落ち着いている。その当時はFA権は認められていなかったが、現在は一定期間所属チームでプレーすれは米国への移籍でも可能になる。無理やり調停に臨む必要もないのだろう。
エンゼルスの大谷翔平(28)はMLBに移籍し来季の年俸は3000万ドル(約41億340万円)で、来季以降はさらに跳ね上がるだろう。だが、米国と日本とでは市場規模が違う。それでもMLBの球団の中には経営状態が悪化し、身売りを画策する球団もある。確かにFA権は個人の権利だ。とやかくいうつもりはない。だが、経営が圧迫され、選手のプレーの場がなくなってしまっては元も子もない。(金額はすべて推定)(デイリースポーツ・今野良彦)