【競馬】数々の記録を塗り替える、今村聖奈の6つの強さとは

 デイリースポーツの正月紙面を飾った今村聖奈インタビュー。調教の空き時間も、TV、新聞、雑誌などの対応に忙しい中で、約1時間の独占取材を快く引き受けてもらった。

 彼女は、なぜ数々の記録を更新できているのか-。スペースの都合から正月紙面で掲載できなかった“こぼれ話”や、記者が感じたことなどを6つの項目に分けて記したい。

 ①常に冷静でいられる

 行きたい馬で出遅れた。読みとペースが違う。思っていたポジションが取れない。いざレースに行くと想定外のシチュエーションになることが多い。そんな時、武器となるのが騎乗経験。焦らずに対処できる新人騎手などいないが、彼女には冷静さが身に付いている。

 なぜ、冷静に騎乗できるのか。ヒントはブラビオで初勝利を挙げたレース後の言葉にある。「同じ失敗をしていては、チャンスがなくなりますから」。この意識が勝利につながった。「その前の週に行けなかったレースがあったんです。無理に出して行って、バタバタになって。(ブラビオも)行ったら同じレースになると思って控えました」。数少ない引き出しから、前週の失敗をレース中に思い返したという。デビュー2週目にもかかわらず、いかに冷静だったかが分かる。

 ②強気な性格

 「冷静に分析できるけど、自分主体で考えるので柔軟に対応しないといけないところもある。性格が出ていると思います。負けず嫌いで完璧主義なので。悪い失敗をしたくないから」。競馬学校在籍時、彼女についてある教官からこう聞いたことがある。「すごい女性騎手がデビューしますよ。性格が男子以上に男子なんです」。“負けず嫌い”な性格は彼女の神髄とも言える。

 ③記憶力

 競馬は記憶のスポーツでもある。「どのレースも、この時こう考えていたな、とか。同時にフラッシュバックするんです」。彼女はとにかく記憶力がいい。レースを振り返ると、馬の並びや結果だけではなく、瞬時に考えていたことが鮮明によみがえる。そして、その感じたことをレースで実践できるのも強みだ。「経験則。この言葉は大切で、理にかなっていると思います」と話すように、成功体験、失敗体験を生かせるジョッキーでもある。

 ④野望

 「学校生の時から“歴史に名を刻めるジョッキーになりたいです”と二次試験で言ったり、志望動機に書いていたんです」。決してビッグマウスではない。信念と自信が彼女の支柱となっている。「教官から“結構塗り替えたな”って言われます。ジョッキーとして、一人の人間として、自信につながったといいますか。それが原点であり、頑張れるモチベーション。後輩にも先輩にも負けたくないという気持ちがある」。思いを口に出して言うことは、自分にとってのプレッシャーにもなるだろう。それを乗り越えたから、今の輝かしい実績がある。

 ⑤競馬学校

 充実した競馬学校時代だったのだろう。教官とのやりとりから、いい環境下で学べたことが伝わる。「1年生の終わりから、教官に“お前はすごいジョッキーになるぞ”って言われて。ほんまかいな。おだてているだけやろ、って思っていました」。入学して1年たった当時のことを、笑いながら聖奈が振り返る。

 15歳から18歳といった成長期に、いい師(先生)と出会う。彼女の性格に師の見抜く力がマッチした。「目に見えた自信がなく、ちょっとか弱い心があったけど、“すごいジョッキーになる”と言われて結果に出ると、自信というか、期待を裏切りたくないという方へ変換できた。教官も性格が分かっていたんでしょうね。教官のおかげです」と感謝する。

 当時の経験が現在に結びつく。「自分奔放に育ててもらったから、自分たちで考えることもできた。何が足りなくて、何が必要かを教官に頼るのではなく、学校生で話し合って。だから、今でも迷った時、何が足りないかを考えられる。自分で答えを出せない時に、同期を頼ったりできるのは、教官の教えがあるから。恵まれた環境だったと思います」。今でも、手土産を片手に競馬学校へとよく訪れている。教官から認められ、学校生の後輩からも慕われていることが分かる。

 ⑥同期と先輩

 一人じゃない。19歳の若者がそう思えることが、いかに重要か。「自分が弱っている時は、同期の存在が大きいですね。同期が勝つと自分も頑張ろうとなる。置かれている立場は違っても、お互いに立場を理解しているからリカバリーしてくれるし、奮い立たせてくれる。(福永)祐一さん、川田さんとか、お世話になっている先輩の存在も大きい」。誰からも好かれるのは、彼女の物おじしない性格と人徳だろう。

 ジョッキーはストレスを感じる、ため込みやすい職業でもある。リラックスする方法は?そう聞くと、「寝ること」と即答。そして「楽しいことを見つけたいけど、これといってないんですよ。馬とじゃれ合っているのが一番幸せ」と笑う姿に、着飾らない彼女らしさを感じた。デビュー2年目を迎える23年の今村聖奈はどう進化するのか-。注目したい。(井上達也)

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