【野球】東大野球部に聞く、高校最後の1年の野球と勉強の両立方法 “絶対にやらなかったこと”とは
1月14、15日に大学入学共通テストが実施された。大学進学を目指す高校3年生にとって大事な受験だが、高校2年生も、高校球児として最後の1年を意識し始めている頃だろう。来年のこの時期には受験を控えることとなるが、ここからの1年間で野球と勉強を両立する秘訣(ひけつ)を東大野球部に聞いた。
偏差値が宮城県トップを誇る仙台二から現役合格した酒井捷外野手(1年)は「引退するまでは部活動に専念しようと考えていた」と、最後まで部活をやりきってから勉強にスイッチを切り替えたという。ただ、オフシーズンとなる冬は「ある程度勉強の時間は取れると思っていたので、数学の予習だったり、まとまった時間でできることを優先的にやって、春以降の部活動が忙しくなったときに授業について行ける準備をしました」と振り返る。
中学時代に、昨年現役を引退した元ヤクルトの宮台康平氏(27)が東大で活躍していた姿を見て酒井も東大を志した。高校時代の部活動は、平日は放課後に3時間、休日はシーズン中なら一日中。限られた時間のなかで、勉強と両立した。
その中で、“絶対にやらなかったこと”は「授業をないがしろにすること」だと言う。「二高は授業の質も良いものが多かったので、授業中に寝たりして他の時間に自習をするよりは授業を集中して聞けば、授業の復習とかにかける時間を減らせる」と効率よく勉強した。
一方で、隙間時間を有効活用する、という話もよく耳にするが、「隙間時間で勉強できるかどうかは個人の好き嫌いというか、合う合わないは絶対にある。私は授業の合間の10分休みに勉強するとか苦手だったので、まとまった時間を取れるようにしていた」と酒井。大会前以外は自由参加だった朝練の時間を利用して、朝練習をしない日も含めて毎朝7時に登校し、始業までの約1時間半を勉強に充てた。そのかわり、帰宅後の夜は特に長時間の勉強はせず早めに就寝。「朝方の勉強習慣、野球も含めての生活習慣だった。あとは、時間がないので授業に集中しようということで、授業中に寝るのとかは避けたいので夜は早めに寝ていました」。自分にとって、“最善の勉強法”を突き詰めた。
引退後は、平日は授業とは別に約5時間、休日は約10時間、机に向かった。リフレッシュ方法は、勉強の場所を変えたり、苦手な科目の間に好きな科目を挟むなど。「たまにだけど、本当に気が乗らないときは思い切って休む。そうすると次の日以降に危機感とかやらなきゃいけない気持ちがまた出てくるので、そういう日は思い切って休むようにしていました」。自分に合った方法で仙台二野球部初の東大現役合格を勝ち取った。
昨季は秋リーグでリーグ戦デビュー。明大との2回戦、3回戦でともに代打で出場し、憧れていた東大野球部のユニホームを着て、東京六大学野球の舞台に立った。「高校野球と大学野球のレベルの違いもそうだし、投手のレベルが今までに出会ったことのないようなストレートの伸び、そこに一番驚きを感じました」と、2打席ともに凡退したが、「六大学という高いレベルで野球ができて、非常に楽しいです」と充実感が勝る。
「文武両道とはいえ、部活動できる時間は高校の3年間の限られた時間。高校野球は社会的にも恵まれた立場にあって、思い切って野球に取り組めるのも高校3年間は貴重な時間。部活動の時間を大切にしてほしい」。文武両道を貫く先輩として、“後輩たち”にエールを送った。(デイリースポーツ・森本夏未)