【野球】侍ジャパン投手陣は飛ぶWBC球にどう対応するべきなのか 変化球がカギを握る
カギは変化球か。侍ジャパン投手陣は、飛ぶWBC球にどう対応していくべきなのか。
3月に日本で開幕するワールドベースボールクラシック(WBC)で使用するWBC球が、NPB球に比べて飛距離が出る-と選手間で話題になっている。詳しいデータはないが、19日の練習終了後には前回17年のWBCに出場した山田哲人(30)も「打った感じだと、ちょっと飛ぶかな。日本のボールより」と肌感覚で証言しているほどだ。
東京ラウンドは他球場に比べて本塁打が飛び出しやすい東京ドームで試合が行われる。これまでも試合を行っている侍Jメンバーにとっては地の利があり有利に働く可能性もあるが、実際はそんな単純な話ではない。
侍Jが攻撃する場合にだけ飛ぶボールが使用されるならば大きなハンディをもらうことになる。だが、全試合で同じ基準のWBC球が使用される。出場各国ともに同じ条件での試合だ。NPB球よりも飛ぶボールを使用しての試合は、侍J投手陣にとってはマイナス要素にもなりかねない。なぜなら、優勝候補とされる米国代表やベネズエラ代表、キューバ代表は侍J以上にパワーヒッターがそろっているからだ。
MLBで活躍するダルビッシュ有(36)や大谷翔平(28)、2年連続で沢村賞に輝いた山本由伸(24)、佐々木朗希(21)など150キロをはるかに超すスピードボールを投げる投手も多い。確かに力対力の勝負でもマイク・トラウト(31)ら名だたるスーパースターを抑えられるだろう。ファンもそれを期待しているかもしれない。だが、WBC球での試合にはリスクがある。これまでの試合なら外野フライに討ち取ったと思ったボールでも、相手打者の規格外のパワーでスタンドまで持って行かれる可能性は否定できない。従来にも増して細心の注意を払った投球が要求されることになる。
逃げのピッチングをしろと言っているわけではない。ダルビッシュや大谷のMLBでの投球を考えてほしい。ダルビッシュも大谷も試合ではストレート一本で押しまくる投球はしない。場面場面で相手打者のタイミングや打ち気をそぐような変化球を駆使している。 ダルビッシュは11種類ともされる変化球を駆使し、米球界では「変化球マニア」とさえ呼ばれている。また、大谷も昨季、15勝9敗、防御率2・33、219奪三振とMLBでのキャリアハイの好成績を残したが、その要因のひとつがスライダーやスプリット、高速のツーシームという多彩でハイレベルな変化球なのだ。
宮崎キャンプではダルビッシュが他の投手たちに変化球の投げ方を教える“ダル塾”が開かれている。教え子たちは変化球の精度を上げるのはもちろんのこと、投げる際の心構えや考え方まで学ぶべきだろう。それがWBC球対応への近道だ。(デイリースポーツ・今野良彦)