【競馬】今年既に6勝マーク!好調の波に乗る2年目・中村直也厩舎が面白い
栗東・中村直也(44)厩舎が面白い。開業1年目だった昨年は17勝を挙げ、タガノフィナーレで秋華賞に挑戦するなど充実のルーキーイヤーとなった。2年目の今年は年明けから好調。(2月20日現在で)既に6勝をマークしており、エルフィンSを制したユリーシャでは、桜花賞(4月9日・阪神)を視野に入れるなど勢いは増している。
好調の要因について中村師は「たまたまです」と控えめに笑うが、「1年経過してだいぶ僕自身も厩舎の馬のことが分かってきた」と話すように、昨年解散した浅見秀一厩舎から引き継いだ優秀なスタッフとの信頼関係が構築できているのはもちろん、適した番組に、適したタイミングで馬を送り出せる体制が整っているというのが大きな要因だ。
中村師といえば、アイルランドの名門エイダン・オブライエン厩舎で修行経験のある国際派。同国クラシックレース歴代単独1位の勝利数を挙げる名伯楽に学んだことは、しっかりと今に生きている。「毎年7~80頭ぐらいの馬が入ってきていたけど、エイダンは1カ月ぐらいで全頭を把握していた。もともと種牡馬をつくるための厩舎みたいな特別さはあるけど、馬を見る目はすごかった。日本と向こうの馬は特に気性面が全く違うけど、僕もいろんな馬を見て目を養った。その引き出しはできたかなと思う」と語る。
国際経験のある新進気鋭の若手調教師といえば、近寄りがたいイメージもあるかもしれないが、トレーナーは気さくな人柄。競馬界に入ってきたいきさつもユーモアたっぷりに語ってくれた。小学校低学年の時に、競馬好きだったという父とオグリキャップの走りを見て、競馬への憧れを持った。ただ、近親に競馬関係者がおらず、ルートを探すのにもひと苦労だった。
「とにかくやりたかった。高校生の時に雑誌で見た北海道の牧場に、『働かせてください』って電話したんだけど、“高校は出とき”ってあっさり言われちゃって。だから高校を出たけど、その時は競馬ブームで競馬学校に入るのも難しかった。つてもなくてね」。そこで目をつけたのが、競走と英語を同時に学べるオーストラリアの学校だった。入学後はしっかりと勉学に励み無事に卒業。ただ、「日本に戻ってきて半年間はプータロー。“ぼったくり”だったのかって思った(笑)けど、その時に学校からアイルランドから声が掛かってるって。それがエイダンのところだった。迷いなくすぐ行ったよ」と懐かしそうに振り返る。
帰国後は、湯浅三郎厩舎(07年に定年解散)を経て、小崎厩舎で調教助手に。調教師試験合格後は、技術調教師として矢作厩舎で学んだ。「日本の競馬と向こうの競馬のいいところがある。それをうまく出せるように」。掲げるモットーも明確だ。「馬の健康を意識しながらも競馬の数を使う。使ってなんぼだと思うから。馬もチャンスをもらえないとね。毎回ジョッキーも完璧に乗るのは難しいし、もちろん競馬で不利を受けることもあるから」。実際に昨年の出走回数は、管理馬も少ない1年目の厩舎としては多い206回。「1歩ずつでも、馬が持っている力の分、しっかりと出させてあげられるように。それを一番大事にしていきたい」と今後の抱負を語った指揮官。地に足をつけながら、着実にトップステーブルへの階段を駆け上がっていく。(デイリースポーツ・島田敬将)