【野球】けん制球3回でボーク? 「NPBも来年以降そうなるのでは」 社会人野球がメジャー流時短規定導入の背景とは
日本の野球も変わるかもしれない。日本野球連盟(JABA)は、今季から社会人野球の試合を迅速に行うために「スピードアップ特別規定」を導入することを決定。3月6日開幕のスポニチ大会(神宮球場など)から適用される予定だ。
新規定は2022年に米マイナーリーグで実施され、23年からメジャーリーグでも適用される新ルールを参考に作成された。
試合時間短縮が目的で、バッテリーにとっては「投手の投球間隔(ピッチクロック)」と「投手のけん制回数制限」が大きな柱となる。
新規定の条文要約を紹介しながらポイントを見ていく。
◆投手の投球間隔(ピッチクロック)
「投手は、走者がいない場合、捕手、その他の内野手または審判員からボールを受け取った後、12秒以内に投球動作を開始しなければならない」
「投手は、走者がいる場合、20秒以内に投球動作を開始しなければならない」
走者なしで違反した場合、球審はただちに「ボール」を宣告。走者ありで違反した場合、球審は警告を発し、同一投手が再び違反した場合は、そのつど「ボール」が宣告される。
従来の社会人野球では、走者がいる場合、20秒以内に投球動作を開始しなければ2度目までは警告、3度目以降に「ボール」を宣告していた。今季から罰則がより強化された形となる。
けん制回数(投手の離脱)にも制限がついた。
◆投手の離脱等の回数制限
「走者が塁にいる場合、投手は同一打者が打席についている間、2回までは離脱することが許される。3回以降は打者をアウトにするか、走者が進塁するか、あるいはランダウンプレー(挟殺)となった以外はボークが課される」
同一打者の間に3回目のけん制でアウトにできなかったら、ボークで進塁を許すことになった。
これらの新規定に、社会人野球の各チームも対策を講じている。
20年、21年の都市対抗で2年連続で4強入りしたセガサミーは、社会人チーム同士のオープン戦を同規定で実施。普段の練習からピッチクロックについては全体的なテンポアップを意識した上で、チームでタイムを計測したり、バッテリー間のサインも簡潔にするなどしている。
けん制回数の制限について、飯田大翔投手(23)は「ちゃんと意味のあるけん制を投げないといけない」と語る。これまでは投球のテンポが悪い時や間を作りたい時にけん制球を投げていたが、けん制球の使い方を変えていく工夫をしているという。
一方で、運営面での懸念もある。
ピッチクロックでは、タイムを計測する機械を球場に設置する必要があるが、JABAの崎坂徳明特別専門職参与は「いずれは全球場に設置したいと思っていますが、シーズン当初からは難しい」とし、現在もどの球場に設置できるかは調整中。機械を設置できない場合、その球場では基本的に二塁審判が計測することとなる。
元広島のセガサミー・西田真二監督(62)は「二塁審判の技量にかかってくると思う」と話す。
メジャーリーグでは先日、同点の九回二死満塁でカウント3-2から打者がピッチクロックの規定違反によりサヨナラの好機を逃して同点で試合終了となったケースがあった。
日本の社会人野球も同様に、チームとしてさまざまな対策を講じているとはいえ、まだシーズン開幕前でオープン戦のみの実施。シーズンが開幕し、いざこれらの規定に違反した時に混乱も予想される。
西田監督は「とにかくやってみてどうなるかですよね、今年」とした上で、「MLBがああいうふうになって、社会人もNPBより早く進めようじゃないかと取り組んでいる。NPBも来年以降そういう風になっていくんじゃないかな」と話す。
“間のスポーツ”と言われている野球。今回の「スピードアップ特別規定」の導入で、試合時間だけでなく、試合内容、見方も変わっていくだろう。(デイリースポーツ・森本夏未)