【野球】大谷の2発が薄めた侍ジャパン不振者続出の影 世界一のカギを握るのは栗山采配 OBが読み解く
ここまでの壮行試合4試合で合計30安打、18得点。どこか爆発力に欠け、くすぶりを醸し出していた侍ジャパン打線。それがどうだ。大谷、吉田、ヌートバーのメジャー勢がオーダーに名を連ねた6日の強化試合・阪神戦では、大谷が2本塁打6打点、吉田が左越え適時二塁打、ヌートバーも2安打1打点と、MLB勢が9打数5安打8打点と全打点を稼ぎ出し、打線低調のイメージ、空気を一掃した。
ここまでの4試合、スタメンの1番打者が12打数2安打の打率・167と、トップバッターとして機能する場面が少なかったが、この日はヌートバーが先頭打者として初打席初安打を放つなど2安打で流れを作り、ここまでの4試合で打率7割と好調の2番・近藤が、5試合連続安打となる1安打2四球でつないだ。大谷はフォークに泳ぎながらも片手一本で中堅フェンスを越えるアーチ、直球に詰まりながらも豪快なフルスイングで右中間席に運ぶ本塁打を放った。好機に一打を欠き、ファンをやきもきさせていたストレスを大谷が一気に解消した格好だ。
8-1の快勝に、いい意味で隠れる形となったのが、村上、山川、山田らの不振組だ。村上は五回に二塁内野安打を放ったが、全5試合で4番に座って16打数2安打の打率・125。安打2本はいずれも単打で代名詞の本塁打はなく、打点もいまだゼロ。山川は2打数2三振で通算14打数無安打、山田も4打数無安打で同13打数無安打と不調。9日のWBC初戦までの予行演習は1試合となったが、明るい兆しがなかなか見えてこない。
阪神、オリックスなどでコーチを務めた岡義朗氏は村上について「決していい状態とは言えないかな」とし、「各球団の4番打者が並ぶ打線なので、自分が決めるんだという意識を持ちすぎず、状況に応じた“つなぎの意識”を持つことも必要じゃないかな」との見解を示した。
続けて「一番いいのは村上が早い段階でいい時の感覚を取り戻すことなんだけどね。1球、1スイング、1打席で激変する可能性は十分にあるから。それでも、いくら実績のある三冠王であっても、復調のきっかけをつかむことが難しいことだってある。最後は栗山監督が考えて決断することではあるけど、スタメンを外すという選択肢はなくても、男気を貫いて村上にずっと4番を任せるのではなく、少し楽な打順で打たせてやることも必要になってくるかもしれない。精神的なケアも含めてね」と付け加えた。
岡氏は山川と山田について「区別するなら確実性のあるタイプというより、意外性のあるタイプに当てはまるので、穴に入ったら長い。周りが結果を出してるから、自分もとなって必要以上に力が入っているようにも見える。短期決戦、優勝ということを考えると、今の状態が続くようであれば、なかなか本番では使いにくくなってくるよね」との見方を示した。
指名打者、一塁手として2試合ずつスタメン出場した山川だが、本番では大谷が指名打者に入ることが確実で、一塁候補にもここまで16打数5安打の打率・313、1本塁打、6打点と好調の岡本和がいることで、山川をスタメンから外し、復調を待つ猶予が持てる。
同じく山田が3試合でスタメン出場した二塁についても、牧が12打数4安打の打率・333と結果を残しており、山川の場合と同様に無理して山田を使う必要がない現状。過去3試合で7打数1安打だった遊撃の源田はこの日、3打数3安打で打率を一気に4割に乗せた。外野手は近藤、ヌートバー、吉田が好調とあって、あとは村上の復調待ちという図式が成り立つ。
岡氏は「栗山監督は選手の心模様まで考えることができるタイプの監督。隅々まで心配りができるというね。なので、なにがベストなのかということを考えに考えた上で判断するだろうけど、優勝に突き進む中で、いかに今苦しんでいる選手達を立ち直らせ、勝利に貢献させることができるかいうことにも注目している」とした。
3大会ぶりの世界一奪還を狙う祭典。日本中を熱狂の渦に巻き込んだサッカーW杯のような盛り上がりになるだろう。限られた時間の中で、どんな化学反応を呼び起こすことができるのか。全30人の侍戦士を駆使して頂点へと駆け上がる栗山タクトも注視したい。(デイリースポーツ・鈴木健一)