【スポーツ】10月のMGCへ 出場権獲得者は約2倍も、瀬古利彦氏「何となくMGC」に警鐘「世界との差は縮まらない」

 24年パリ五輪選考会「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC、10月)出場権をかけた、主要な選考大会が12日の名古屋ウィメンズマラソンで終了した。東京五輪選考会として行われた19年のMGCでは男子が34人、女子は15人が出場権を獲得したが、今年のMGCの出場権は男子が62人、女子29人が獲得。男女とも人数は約2倍になった。

 東京五輪代表選考からは指定大会での男子の設定記録が1分短縮され、女子はMGC出場選手を増やすため設定記録に変更はなかった。名古屋ウィメンズマラソン後に日本陸連の会見に出席した瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダは「(女子は)同じ条件の中で人数が相当増えたことはうれしい」と一定の手応えを示した。高岡寿成シニアディレクターも「同じ状況で29名になったことは、競技力の向上に努められていると思う」とうなずく。

 一方で、瀬古氏は危機感も募らせた。「(東京五輪選考過程での最高記録だった)一山(麻緒)さんの記録を超えている選手が今のところ新谷(仁美)さんだけ。そこはちょっと寂しいかな」。記録が伸び悩む女子長距離界に警鐘を鳴らした。

 名古屋ウィメンズマラソンでは優勝のルース・チェプンゲティッチ(ケニア)に、日本勢は3分以上の差をつけられるなど世界の壁を痛感する大会でもあった。瀬古氏は「(MGC出場権獲得の)人数だけ増えても、ちゃんとしたレベルの高い選手がいないのは手放しでは喜べない所。新谷さんに続く選手が出てこないとまだまだ世界との差は縮まらない」と渋い顔だ。

 男子も同様だ。5日の東京マラソンでは山下一貴(三菱重工)が日本歴代3位となる2時間5分51秒で日本勢最高の7位に入ったが、1位集団の海外勢とは離される結果となった。瀬古氏は「外国人招待選手の1位から6位の集団、(日本人選手の)誰かあそこにいけないと、世界の壁は乗り越えていけないんじゃないかな。次はあの集団の中に入れる力を、と思いました」と“世界”が課題だと強調した。

 21年の東京五輪では男子で大迫傑(ナイキ)が日本勢最高の6位、女子で一山麻緒(資生堂)が日本勢最高の8位に入ったが、メダル獲得者はいなかった。世界選手権と五輪で日本勢が男女を通じてマラソンでメダルを獲得したのは、13年世界選手権の福士加代子の銅メダルが最後。近年の日本勢は表彰台から遠のいている。

 「何となくMGCに出ればいいという雰囲気に男女ともなっている。仕組みも考えないといけない」と瀬古氏。24年パリ五輪、さらには28年ロサンゼルス五輪へ、世界の壁と戦うためにも、いま一度気を引き締めることが求められている。

(デイリースポーツ・田中亜実)

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