【野球】サッカーW杯とWBCの渋谷の盛り上がりはなぜ違うのか

 侍ジャパンはイタリア代表との準々決勝に勝利し、アメリカラウンドへの切符を手にした。熱闘が繰り広げられた16日、記者は、東京都渋谷区のスポーツバー「Fields 渋谷」に潜入。昨年11月開催のサッカーW杯との“熱気の差”を調査した。

 日本代表戦がある日は、連日大盛況だという店内。この日も予約がいっぱいで、満員御礼。大谷が投じる一球、一球に拍手が起こり、岡本が3ランを放った際には皆立ち上がり「ペッパーミル・パフォーマンス」で喜びを大爆発させた。

 だが、試合終了までに帰ってしまう客もチラホラ…。大勢が九回を抑え、勝利を決めた時の盛り上がりは、先制点を挙げた瞬間よりも小さいように感じた。W杯の時には試合終了と同時にお祭り騒ぎになった渋谷スクランブル交差点も、人影はまばら。JR渋谷駅前も閑散としていた。

 野球とサッカーは何が違うのだろうか。

 誰もが口をそろえて挙げたのが、ファンの年齢層の差だ。店長の田中守さん(68)は「野球はサラリーマンが多く年齢層が高い。サッカーはファンが若年層で学生さんが多い」と話す。確かに、店内にはスーツ姿の人が多い。W杯の際も観戦に訪れたという20代の男性も「野球は年齢層が高い」と話し、八回で帰ってしまった4人組も仕事終わりの会社員。翌日の予定を考えての帰宅だったのだろう。

 さらに田中さんは経験を踏まえ「学生のファンが多いサッカーは外に出たらもう一回騒ごうとかある。野球は年齢層が上がるので、(次の)盛り上がりもない」と続けた。ファンの年齢層の違いが、要因として有力だ。

 さらにスポーツとしての特性の違いもある。店に訪れたファンは「サッカーの方がルールが分かりやすい。野球は難しい」。サッカーは常に試合の状況が変化するため盛り上がるポイントも多い。試合時間もハーフタイムを入れておおよそ2時間だ。

 一方で野球は攻撃と守備が分かれており、初めて観戦する人にとっては、ルールや流れを理解することが難しい。さらに試合時間も度々3時間を越える。流行りに呼ばれて応援に来た客には、サッカーの方が分かりやすく、入り込みやすい。

 世界ランクの差もファンの熱量に差を呼んでいる。サッカー日本代表の過去最高成績は9位。それに対し、侍ジャパンは過去4度開催されているWBCで、2度も優勝している強豪だ。別のファンが「(野球は)勝って当たり前みたいになっている。サッカーは勝てるかわからないですよね」と話すように、試合を勝ち上がるドキドキ感が違うようだ。

 その言葉の通り、ここまで侍ジャパンは5連勝。ただ、ここからの戦いはどちらに転ぶか分からない。世界屈指の強豪国がアメリカラウンドに集結し、前回大会優勝国のアメリカに加え、プエルトリコ、メキシコ、キューバ、ベネズエラが顔をそろえる。

 渋谷の町ではまだ、W杯ほどの盛り上がりは見られていない。だが、それはむしろ、嵐の前の静けさか。侍ジャパンがさらなる強敵とぶつかり合い、ひりつくようなゲームを見せた時、その熱狂はピークを迎えるかもしれない。(デイリースポーツ・南香穂)

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