【野球】なぜ阪神は開幕3連勝できたのか 昨年は悪夢の開幕9連敗 18年ぶりのアレを目指す

 2005年以来、18年ぶりのリーグ制覇を狙う阪神が、優勝候補にも挙がるDeNAを相手に開幕3連勝を決めた。08年以来、15年ぶりにタテジマに袖を通した岡田監督にとっては最高のスタート。リーグワースト記録となる開幕9連敗を喫した昨年から一転、なぜ阪神は開幕3連勝を飾ることができたのだろうか。

 開幕戦は二回に梅野、小幡の適時打などで3点を先制し、2年連続最多勝の青柳が5回2/3を2安打1失点に抑える好投で白星発進。2戦目は秋山が初回に4失点、二回にも1点を失う苦しい展開だったが、好調な打線が徐々に追い上げて同点とすると、延長十二回に選手会長の近本が相手守護神・山崎からサヨナラ適時打。ドラフト6位新人の富田にプロ初勝利もついた。3戦目は三回に4番・大山、ドラフト1位・森下の適時打などで3点を奪うと、才木が6回1/3を4安打1失点と試合を作り、終盤には代打・原口のチーム今季初本塁打となる1号2ランでダメを押した。

 阪神の主戦投手として12勝を挙げ、1985年のリーグ優勝に貢献したプロ野球解説者の中田良弘氏は「この3連戦は随所で岡田監督の采配が光った。その中でも、2戦目で二回までに5失点していた秋山を5回まで投げさせたことが、この3連勝につながったのではないかと見ている」と分析した。

 初回にソト、桑原、森の適時打など5安打を浴びる乱調でいきなり4失点。味方が3点を返して1点差に追い上げた二回にも宮崎に左越えソロを浴びたが、岡田監督は無死一塁で回ってきた直後の打席に秋山を送った。犠打を決め、中野の右前適時打で再び1点差に迫ると、三回からの3イニングを無失点。5失点はしたが、マウンドを5回まで守った。

 中田氏は「普通なら二回までの5失点で交代を告げてもおかしくない場面。結果として秋山は2日に登録抹消になったけど、三回から中継ぎ陣をつぎ込んでいたら、3連戦をにらむと厳しいベンチワークを強いられていた可能性が高い。五回まで放らせたのは、今季初登板なんだからという岡田監督の親心なのかもしれないけど、やっぱり長いシーズンを見据えた上での采配だと思うし、これまで監督として踏んできた場数の多さ、経験値の高さが物を言った逆転勝ちだったように思う」と語った。

 スコアブックには残らない采配は、初戦から輝いていた。開幕戦の二回、2点を奪ってなお無死満塁の場面。青柳は1球もバットを振らず、見逃し三振。「去年までなら青柳に打たせていた場面じゃないかな。今年はベンチがしっかり試合を預かっているという印象を受けたね」と中田氏。2点を先取してイケイケになり、青柳が束縛なく自由に打って併殺に倒れるのが一番避けたい形。ベンチから“故意三振”の指示が出ていたと思われ、1死からの近本の犠飛につながった。

 2点差に追い上げられた3戦目の八回2死一塁。カウント0-1から一走・中野がけん制につり出されながらも二塁を陥れると、代打・原口を送り込んだ。打席の島田はノイジーに代えて七回から守備固めとして起用していたが、得点圏に走者が進んだことで、指揮官は勝負のタクトを振った。すると代打の切り札が自身への初球を左翼席にチームの今季初本塁打となる1号2ラン。DeNAの反撃意欲をそぐ値千金の一撃だった。

 岡田監督は「昨日のお返しを、原口も行かせなあかんし。(走者が)セカンドにいったら原口は準備させとったんで。昨日の今日だし。速いストレートを捉えられるのは原口かなあと思っていたんで。まあ予定通りだったかなと。(采配が)当たったと言っても、俺にしたら普通のことやろ、こんなの。点取りに行くんやからさ。コーチかて『すごい』言うけど、『すごくない。普通やろ』って。点取るためにやってるんやからな」と思惑通りの展開を振り返った。

 原口は2戦目の同点の八回1死二、三塁から代打で登場しながら、エスコバーの直球を捉え損ねて三邪飛に倒れていた。同じ投手相手にリベンジチャンスを即座に与えた采配、それに応えた原口。どちらも見事だった。

 走塁も光った。初戦の八回、右前打を放った佐藤輝が右翼・楠本の緩慢な動きと山なりの返球を見て二塁を陥れると、小幡の適時打で貴重な6点目のホームを踏んだ。2戦目の五回1死一塁では、大山の左前打で中野が一気に三塁を奪い、佐藤輝の中犠飛で同点に追いついた。左翼・佐野のチャージの甘さを突いた隙のない走塁だった。

 昨年はミスが目立った守備面でもビッグプレーがあった。3点リードで迎えた3戦目の七回2死一、三塁。宮崎のあわや同点3ランかという打球が左中間フェンスを直撃。2者が生還して1点差と思われた状況で、近本-小幡-梅野とつないだ返球で一走・佐野を刺し、追い上げムードを断った。中田氏は「キャンプからずっと継続してやってきたプレー。外野手はしっかりカットマンに返球して、本塁につなぐというね。しっかり実を結んだ場面だったと思うし、勝利を決定づけたプレーだったといって過言ではないんじゃないかな」と高く評価。六回に佐藤輝が三ゴロを一塁に悪送球する場面はあったが、3連戦で1失策と綻びは最小限に食い止めた。

 投手を除く3連戦のスタメンは一緒で、梅野を除く7選手が打率3割以上をマーク。代打陣も3戦目で原口が輝き、2戦目では延長十二回2死から糸原の右前打を皮切りに、劇的なサヨナラ勝ちを呼び込んだ。救援陣では岩崎がセ・リーグで唯一となる3連投になったが、連投していた浜地を3戦目のベンチ入りメンバーから外し、同じく連投中だった湯浅にはキャッチボールもさせなかった。どんなに僅差でも、この日の最後は3年目右腕の石井と決めていた。143試合の長丁場を見据えながら白星を3つ重ねられたことが尊さを物語る。

 「岡田監督はこれまでの経験値に加えて、外から野球を見ている間に野球勘が研ぎ澄まされているような感覚を受けた。神がかってると言ったら失礼だけど、今年はアレしそうだね」と中田氏。緻密な計算に裏打ちされた試合運びが、昨年とは真逆の開幕3連勝となった。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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