【野球】なぜ原監督は坂本をスタメンから外したのか 名球会OBが采配に迫る
横浜スタジアムのスタンドがどよめいた。5日のDeNA-巨人戦。巨人のスタメンが発表される中、「8番・ショート・門脇」のアナウンスに巨人ファンだけでなく、DeNAファンからも驚きの声が上がった。ネットのリアルタイム検索でも「スタメン落ち」「門脇誠」が急上昇ワードになるほどの大騒ぎ。開幕から16打席連続無安打中だったとはいえ、原監督は開幕5試合目で通算2205安打の坂本をスタメンから外す荒療治に打って出た。
プロ17年目の34歳。昨年は83試合に出場し、打率こそ・286をマークしたが、本塁打と打点はレギュラー定着後ワーストとなる5本塁打、33打点に終わった。「コンディションとシーズンに集中したいから」とWBC出場を辞退。だが、オープン戦で22打席連続無安打とスランプに陥るなど、打率・111と不振にあえいだ。
それでも、4日・DeNA戦の九回1死満塁では宮崎の好守に阻まれたが、三塁への鋭いライナーを放っていただけに、一夜明けてのスタメン落ちには驚かされた。チームは開幕戦を落とした後、3連勝を飾っていたタイミング。なぜ原監督は開幕5試合目で坂本をスタメンから外す決断をしたのだろう。
元阪神監督で、通算2064安打を放ったプロ野球解説者の藤田平氏は「巨人はここ2年優勝から遠ざかっていて、今年はなんとしてでも優勝するんだという原監督の意気込みの表れなんじゃないかな」と推察し、続けて「ベンチの空気を変えようという意図もあったと思う。これまでだったらレギュラー安泰だった坂本であっても、こういう調子であれば容赦なく代えるよという全選手に対する厳しいメッセージ性もあったのではないか」と分析した。
さらに監督経験者の立場から「現状の調子を含めて、力が同じぐらいだと判断した場合、監督は若い選手を使いたいと思うもの。使い勝手がいいからね。2日の中日戦で送りバントをしてたけど、実績のある坂本には出せないサインがあったり、制約も多いはず。でも、若い選手であれば何の縛りもない。送りバントだろうとエンドランだろうと、作戦面の立てやすさもあるから」と解説した。
坂本のスタメン落ちについて原監督は「いろんなトータルで考えてね、ということですね」と語り、続けて「明日は先発で行かせるつもりでおります。行ってもらうつもりです」と6日・DeNA戦でのスタメン復帰を示唆した。
5打数無安打に終わった4日の試合後には「なかなか我々が手助けできるのは難しい選手ですよね。自分でここは乗り越えないといけませんね。1年目、2年目、3年目くらいの選手なら、頭なでなでしながらね、いろいろあるでしょうけど。まぁしかし、そこはもう自分で越えなきゃいけない選手ですね」と話している。
藤田氏は最後に「どんな選手であっても、必ず“その時”はやってくる。“その時”を遅くする、少しでも先送りにできるかどうかは選手次第。若手への切り替えというのは、どのチームでも毎年起こり得るものだから」と結んだ。榎本喜八に次ぐ歴代2位、右打者では年少記録となる31歳10カ月で通算2000安打を達成した求道者。シーズンはまだ5試合が経過したばかりだが、坂本にとって今後の試合が持つ意味はこれまでになく大きなものになってくる。(デイリースポーツ・鈴木健一)