【野球】2カ所骨折中の日本ハム・江越 新庄監督もホレ込む身体能力と、選手に愛される人間力

 本当に折れているんだろうか…。たとえレントゲン画像があっても、眼前の動きだけを見れば疑ってしまう。

 新天地で輝く日本ハム・江越大賀。フェンスを恐れない捕球に対する執念、プロも驚くスーパーレーザービーム。かつて阪神の平田勝男2軍監督(当時、現ヘッドコーチが)が「練習だけ見たら3億円プレーヤーや」と、言っていた言葉を思い出す。そんな才能は北の大地で、新庄監督の下で花開くだろうか。

 開幕前から試練の連続ではある。開幕前に実戦練習で右手骨折が判明したが、本人の強い希望で出場を継続。さらに、7日のオリックス戦(京セラドーム大阪)で、背中に死球左あばら骨も骨折した。新庄監督によると「せきをするのに苦しいという」から、病院で検査を受けて骨折が判明。それでも「じゃあ、スタメンでいこうか」と、16日の西武戦ではスタメン起用した。

 八回には安打で出場後、今川の左前打で快足を飛ばして三塁へ。三塁手・呉念庭と交錯したが、江越は平然した表情。呉は空中で1回転し、そのまま負傷交代となった。試合後も平然とした表情の江越は「大丈夫、大丈夫です。大丈夫だから試合に出ているので」とサラリと言い残し、足早に球場を後にした。

 昨年10月、トレードで日本ハムに移籍。他を圧倒する身体能力に加え、今季は危機感と覚悟を感じさせる。新庄監督もそんな男を高く評価。22日の楽天戦では今季初盗塁と好守で勝利に貢献。指揮官も「江越君が大きかった」と、開口一番に活躍を絶賛した。翌23日の試合前には打撃練習で熱心に助言。なんとかしたい、なんとかさせたい…両者の思いが伝わる光景だ。

 そんな姿はチームメートの心も動かしている。開幕から本来の調子を出せずにいた上沢は、ロッカールームで江越に悩みを吐露した。結果以上に形、内容にこだわっていた。そんな時、言われた。

 「どんな形でも抑えられたら反省できるけど、抑えられなかったら反省できないよ」

 何げない言葉が心に染みた。「間違いないっスよね。泥くさくても抑えたら、反省ができる。いい振り返りができる」。上沢は22日の楽天戦、8回途中、8安打を打たれながら3失点で2勝目を手にした。江越も守備でピンチを救った。もがき、懸命に生きてきた男の言葉は、エースに原点を思い出させた。

 シーズンはまだ序盤。江越にとっても、チームにとっても、戦いは始まったばかりだ。ただ、2カ所を骨折しながらも戦い続ける姿勢はファンに、選手に確かに伝わっている。いまは下位に沈む日本ハムが、浮上するための原動力になるはずだ。(デイリースポーツ・田中政行)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス