【競馬】みんなに愛される“プボくん”ことディープボンド ファンの思いを乗せて悲願成就へ
流行などには疎いタイプの記者だが、一部界わいでいつからか、ディープボンド(牡6歳、栗東・大久保)が名前の真ん中を取った「プボくん」という愛称で親しまれているのは知っている。私自身も好きな一頭だ。G1では過去3度の2着があるように、“勝ち切れそうで勝ち切れない”というところも、ファンの心をくすぐるのだろうか。
「プボくんと呼ばれているのは最近知りました。素直な馬なんですよ。走る時も一生懸命に、期待に応えようと頑張ってくれています」。そう話すのは管理する大久保師。嫌気が差すと走ることをやめる馬もいる中、最後まで諦めずに走り切る。そんな強い心の持ち主だという。さらに「ボンドは人を見分けていると思います」と師。「特定の馬だけだと思いますが、人を認識するというか、頭がいいんだと思います。馬房でも近づいたら“エサちょうだい”という感じで近寄ってきますよ」と、プボくんの普段のかわいさを語ってくれた。
調教担当の谷口助手もプボくんの魅力に取りつかれた一人だ。同助手にも愛される理由を聞いてみると「ギャップでしょうね」と即答。「普段はおっとりしていて、歩くのもポコポコという感じなのに、走るってなると一生懸命なんです。僕も趣味でマラソンを走るので、本当に尊敬します。(人年齢に換算すると)43歳の僕よりも年上なのに」と、一種のギャップ萌えが人気につながっていると分析していた。「ディープボンドとの出会い、一緒にいた時間の全てがプラスの経験になっています」とトレセン屈指の腕利きをして、感謝の尽きないアイドルホースだ。
そんなプボくんの下には、お守りや手紙といった多くの贈り物がファンから届くという。「何年か前からいただいています。結構来ているんですよ。ありがたいですね」と指揮官。プレゼントを保管している谷口助手に見せてもらうと、持ち切れないほどのお守りがどっさり。お守りが厩舎に送られるのはそう珍しいことではないが、ここまでの量はなかなかない。「(写真に写っている)これが全部じゃないですよ」とのことで、これだけでもいかにファンに愛されているかが分かる。
昨年、一昨年と2年連続で2着と苦杯を喫した春盾。ただ、今年は3年ぶりに京都へと戦いの場が戻る。未勝利戦、京都新聞杯Vに加え、菊花賞4着のある舞台だ。「ジョッキーも京都は合うと言っていました」とは大久保師で、そして「僕自身、物心ついた時には淀に住んでいましたからね。そして、天皇賞は京都の大きなレースですから」と気を引き締める。父で元調教師の正陽さんのG1初勝利が、1976年エリモジョージの天皇賞・春。当時10歳だった指揮官の心を強く揺さぶった思い出のタイトルだ。“淀の天皇賞”への憧れは人一倍強い。
ファンや陣営の思いを一身に背負うプボくん。新装・京都競馬場最初のG1は、かわいさと強さを兼ね備えたステイヤーの悲願成就に注目したい。(デイリースポーツ・山本裕貴)