【野球】「本塁打儀式やめました」ブルージェイズの絶好調男が明かした『儀式廃止』のわけ
光り輝く黄金のヘルメット。大谷翔平投手が所属するエンゼルスが「本塁打儀式(ホームラン・セレブレーション)」の新アイテムをお披露目したのは本拠地開幕戦となった4月7日のブルージェイズ戦だ。
初回に先制2ランを放ったトラウトがホームに生還すると、ベンチ前で待ち構えたフィリップスが日本制の兜をその頭にかぶせた。観客のほぼ全員が初めて目にしたであろうデザイン。本拠地がさらに沸いた。
この2、3年、MLBでは本塁打儀式がブームになっている。メジャー関係者の話を総合すると、火付け役はレッドソックスだとか。ホームランを打ってベンチに戻った選手をランドリーカートに乗せる儀式(現在は黄金ダンベル)。ベンチ内は盛り上がり、チームに一体感が生まれる。他球団もあとに続いた。
ロイヤルズは映画「グラディエーター」の仮面、マーリンズなどはチームのロゴを模した特大ペンダントトップのネックレス、マリナーズは三叉の矛、ブルワーズはチーズ型ヘルメット(NFLパッカーズの応援アイテム)、パイレーツは海賊の剣、タイガースはホッケーヘルメット、レッズはバイキングのマントとヘルメット…。
ひげ面の男たちが野球少年のように声を上げ、笑みを浮かべる光景は話題となり、野球ファンの間でも新たな楽しみとして定着した。
ブルージェイズも例外ではなく、2021年後半からブルージャケットを本塁打儀式のアイテムとして使い始めた。ゲレロをはじめ、若く、才能豊かな中南米系選手が多く在籍する。球団広報部によると、発案者はスペイン語の通訳を担当するヘクター・レブロン。ジャケットの右胸に書かれたスペイン語「BARRIO」は「隣人」を意味し、背中にはチームのロゴと選手らの出身国名がプリントされている。菊池雄星投手の母国「JAPAN」の文字も入っていた。
昨季は92勝を挙げて2年ぶりにプレーオフへ進出したブルージェイズを象徴するラッキーアイテム。ところが、ブルージェイズはエンゼルスが兜を初披露した試合で七回にボー・ビシェット内野手が逆転3ランを打ったにもかかわらず、青いジャケットを着せなかった。
ひそかに楽しみにしていた本塁打儀式。一夜明けのブルージェイズのクラブハウスでビシェットにその理由を聞くと、「今季は本塁打儀式をやめました。そうチームで決めました」。25歳の好青年はこうも言った。
「162試合の長いシーズン。いろんな状況でホームランは出る。たとえば、7点差で負けている時に僕はジャケットを着たくない。心から喜ぶことはできないですから」
同じ気持ちはビシェットだけではなかったようでオフに複数の選手から同じような意見があったとか。2月のキャンプ期間中に行ったミーティングで『儀式廃止』が正式に決定したという。
ビシェットはエンゼルスの新たな本塁打儀式を「ナイスなヘルメット。何も問題ないと思う」と前置きしながら「でも僕たちはやらないと決めました。みんなからのハイファイブで十分です」と続けた。
6日現在、打率・326、チーム最多の7本塁打&22打点の絶好調男が明かした“ブーム逆行”のわけ。メジャー30球団、独自の色があるから面白い。話を聞きながら理解したようにうなずいた記者だったが、今でも本塁打ジャケットの復活を願っている。
(大リーグ担当・小林信行)