【野球】2年目の中日・立浪監督と日本ハム・新庄監督が抱える誤算とそれぞれの事情
就任2年目を迎えた中日・立浪和義監督(53)と日本ハム・新庄剛志監督(51)が、開幕から想定外の誤算に悩まされている。中日は12勝17敗の借金5でリーグ最下位。日本ハムは13勝18敗の同じく借金5でリーグ5位。ともに昨季はリーグ最下位に終わり、今季のスタートダッシュと巻き返しに燃えていたが、ここまでのところ思うような成績を残せていない。一体、どこに原因があるのだろうか。
中日のチーム防御率はリーグ2位の2・62。主戦の柳が防御率1・99、小笠原が同2・73、WBC決勝でトラウトを三振に仕留めた20歳の高橋宏も同2・79の数字を残し、抑えのマルティネスはリーグトップの10セーブ。エースの大野雄が左肘クリーニング術で戦線離脱したが、前評判の高かった投手陣は総じて下馬評通りの数字を残している。
やはり、中日の課題は打撃だ。29試合で両リーグワーストの80得点。1試合の平均得点は2・8で、首位・DeNAの4・1とは大きな開きがある。本塁打数も両リーグで唯一の1桁台となる6本塁打。立浪監督は昨オフ、新外国人調査のためにドミニカ共和国に飛び、前レッズでメジャー通算41本塁打のアキーノを獲得したが、ここまで20試合に出場して打率・154、1本塁打、6打点と全くの期待外れで、1日に出場選手登録を抹消された。来日8年目のビシエドに至っては、14試合の出場で打率こそ・255ながら、0本塁打、0打点とほとんど機能していないというのが実情だ。
野球評論家の中田良弘氏は「中日の誤算、低迷の原因は本塁打数の圧倒的な少なさだろうね。バンテリンドームは広くて、本塁打の出にくい球場。それを承知で投手力を中心としたチーム作りを進めてきた歴史はあるにせよ、一発に期待できない打線というのは投手の立場からするとツラい。チャンスは数多く作ってるんだけど、ここぞの決定機で一本出ない図式も、ここ何年か変わってないし。2、3点のビハインドをひっくり返すのが厳しい打線となると、得点の取り方そのものを見直す必要があるのかもしれない」と分析した。
昨年、59勝81敗3分けの借金22で最下位に甘んじた日本ハム。新庄監督は「優勝しか狙わない」と宣言し、「俺の頭の中では(開幕から)50試合しかない。もう、スタートダッシュ。30~50を常にトップの位置にいて、あとはもうその経験がつながっていくから。最初の50はマジで、もう死ぬ気で。だから、試合勘をその開幕戦でトップに持っていけるように」とスタートダッシュの重要性を声高に訴えていた。
だが、開幕戦に敗れると開幕10試合で3勝7敗。同20試合で6勝14敗。首位・オリックスに5・5ゲーム差をつけられるなど、力を込めたスタートダッシュに失敗した。
故障者続出の誤算が続いた。開幕前に浅間が左足を骨折。メジャー出場経験を持つドラフト3位の加藤豪が右腹斜筋肉離れ。前阪神の斎藤友も右膝前十字靱帯断裂で離脱。開幕後もドラフト2位の金村が右肩の張り、ポンセが左膝違和感で米国に帰国。野手では石井が左肩甲下筋肉離れ、清宮も左腹斜筋損傷と離脱者が相次いだ。
昨オフ、チームの主力だった近藤がソフトバンクにFA移籍。前中日のマルティネス、オリックスからFAで伏見、ドラフト1位で投打二刀流の矢沢を獲得したが、打線の中心となる選手の手当ては不十分で、投手陣ではWBCで快投を繰り広げた主戦の伊藤が1勝3敗、開幕投手の加藤貴も防御率2・98ながら1勝2敗と数字を伸ばせず、チーム低迷の一因となった。
中田氏は「すごく若い選手が多いチームだし、この戦力で優勝っていうのは難しい条件だとは思うけど、故障者の多さは新庄監督にとっては誤算だっただろう。あと伊藤ね。この前ようやく今季初勝利を挙げたけど、1勝3敗は逆になってもらわないと困る選手だから。投手が抑えると打線が打たなくて、打線が打った時は投手が崩れるという投打の歯車がかみ合わない試合が多かったのも誤算だったんじゃないか」と語った。
それでも新庄監督は「言い訳にはならないんですけど、これだけケガ人が多い中、このメンバーで戦って勝っていけているという喜びもものすごくある」と想定外の故障者続出に構想は乱されながらも、出場機会を得た新たな選手が結果を残し、経験値を積み、自信に変えている現実を収穫と受け止めた。
中日は5~7日の巨人戦で今季初の同一カード3連勝を決め、5位・巨人にゲーム差なしに迫った。一方の日本ハムも直近の11試合で7勝4敗と持ち直しの気配がある。
中田氏は日本ハムについて「ここに来て若い選手が着実に力をつけてきているという印象が強い。あと、ソフトバンクから来た田中正義ね。彼が後ろでピタッと決まれば、もっと面白い存在になってくると思う」とした。
誤算につまずき、開幕ダッシュに失敗した両軍。ただ、両チームの現状は上向き気配。まだ100試合以上残っているだけに、誤算を取り返すチャンスはいくらでもある。(デイリースポーツ取材班)