【野球】70歳で初の公立校指導者に 創志学園元監督・長沢氏「公立の高校こそ、指導者の力量が問われる」
兵庫県丹波篠山市では昨年10月から、創志学園野球部元監督の長沢宏行氏(70)が特別職「スポーツ振興官」に就任し、併せて県立篠山産業高校の野球部監督に就いた。少子高齢化に人口減少などで衰退気味の同市。全国的に注目度の高い高校野球を通じて活性化を図ろうと取り組んでいる。
女子ソフトボールや野球などで数多くの高校、大学を指導してきた長沢監督。70歳にして人生初となる公立校での指導者に就任した。1996年アトランタ五輪では、女子ソフトボール日本代表のヘッドコーチを務めるなど、豊富な経験を持つ。これまでの経験を踏まえ、今、感じていることや使命感は何かを聞いた。
「私立の高校の監督をしていて、いい選手を集めて勝つのは当たり前だと思いました。公立の高校こそ、指導者の力量が問われる」
他県からでも入学が可能な私学とは違い、公立は県内のみ。高校によって推薦枠はあるものの、ほとんどが一般入試に。「選手を集めにくいというのもありますけど。まず『甲子園に絶対出たい』という気持ちで入ってきていない。大学進学や就職のために入学してくる子がほとんどです」と、入学してきてもそれぞれ、子どもたちの目標は違う。
選手の意識だけでなく、練習時間も限られる。「創志学園と比べると三分の一くらい。平日で3時間ほど。帰宅する電車の時間もあって6時半には乗らないといけない。練習時間は限られていますが、新入生も14人入ってきて部員は33人となり、実戦形式もできるのでいい練習ができています」と話す。
高校野球の3年間は今後の人生にも大きな影響を与える。長沢監督が心がける指導者としての姿は明確だ。「野球を学ぶではない。野球で学ぶ。全員がプロ野球選手になれるとは思っていないからね。努力は報われるということを伝えていかないといけない」。どんな選手を育て、どんなチームを作るのか。情熱を持ち、子どもたちに全てを注ぐ。
◆長沢 宏行(ながさわ・ひろゆき)1953年4月26日生まれ、70歳。兵庫県出身。市西宮では主将。日体大ではソフトボール部でインカレ優勝。アトランタ五輪ソフトボール日本代表のヘッドコーチなどを歴任し、夙川学院女子ソフトボール部監督として全国制覇多数。神村学園監督時代は2005年のセンバツで準優勝。10年から創志学園監督を務め、昨夏限りで退任。昨年10月から篠山産の野球部監督として指導。