【野球】阪神・岡田監督の「おかしくなる可能性あるよ」が奏功?佐藤輝の本塁打後の打席 指揮官が「良かった」と評価した意味
「阪神6-3DeNA」(12日、甲子園球場)
阪神の佐藤輝明内野手が三回に5号ソロを放った。低めのボール球を上からたたき払うように捉え、打球角度20度というプロ野球でもめったに見ない弾道でバックスクリーンへ飛び込んだ。
チームとしても二回に逆転していただけに、次の1点を早い段階で奪えたのは大きかった。主導権をガッチリと引き寄せる追加点。岡田監督も「そら大きかったよな」とたたえたが、佐藤輝個人としてこの後の打席をどうするか-。指揮官はここに着目していたように思う。
その伏線は前回、本塁打を放った5日・広島戦。第2打席で左翼へ4号ソロをたたき込んだ以降の打席。第3、第4打席とボール球に手を出して空振り三振に倒れた。岡田監督は「もうちょっとあとの打席大事に打たなあかんわな。はっきり言って。ああいうのでな、崩れる可能性があるからな。ゲームの中で…。うーん。だからな、あんまりなボール球とか振りだしたら、また、おかしくなる可能性があるから。大事にいかなあかんわな」と指摘。その“予言”は的中した。
2試合連続で雨天中止となり、3日間ゲームが開いた影響も勘案されるが、9日からのヤクルト3連戦で12打数1安打。直球に差し込まれ、変化球に泳がされるシーンが目立ち、捉えきれない打席が続いた。
それだけに佐藤輝がどうするか-。“以降の打席”に着目すると、指揮官の「大事にいかな」という指摘を理解し、実践しているように映った。五回1死二塁で迎えた第3打席、初球から際どいボールをしっかり見極めて3ボールとなった。打てる球だけをしっかり自分の形でスイングし、最後は内角のストレートを見極めて四球を選んだ。
さらに七回の第4打席も初球のインハイをきっちり見逃し、カウント1-1からカーブを自分のタイミングで振り切った。結果は打ち損じの一ゴロだったが、岡田監督は「俺は最後のファーストゴロが一番良かったな」と目を細めた。
その理由をこう説明する。「右バッターが今日はポイント差し込まれて、何本あった?ライトのポップフライというか、遅れ気味にバットこすったような当たりな。あれはポイント差されてるからリストが返らんよな。まっすぐ、変化球、両方ともな。ミエセスにしてもな。あんなんもっと強引にガーンといけばいいけど。まだちょっと、そのポイントにならないんやろうな。だからバット滑ってしまうんよな。だから力のないライトフライになるよな、右バッターはな。そこがもうちょっとやな。あれがガンといけたらな」
昨秋のキャンプから打つポイントを口酸っぱく指摘してきた。デイリースポーツで評論家を務めていた際、打者のポイントが前に出てこないことで直球に差し込まれる阪神の打者を分析していた。「直球に弱い」と称された阪神打線を改善するために、手を打ってきた。
第一次政権時代から鋭い観察眼で打者の調子を見極めることに定評があった岡田監督。12日の試合前には佐藤輝に対して「まあ、きょうもだいぶバッティングコーチに言うたよ。あまりにも悪かったからな。だいぶ練習というか、打つ前にだいぶ修正はしてたみたいやけどな」と打撃コーチを通じてアドバイスを送っていたという。
「川上さんがよう言うとったやん、ヒット一本打って四球一個選んだら首位打者やで言うてな」と打撃の神様の金言も伝えていた指揮官。1打席、1打席を大切に-。好不調の波を少なくするには、その意識こそが重要になる。その思いを理解し、打席で実践した佐藤輝。飛躍へ向け、一歩ずつ前進しているように映った。(デイリースポーツ・重松健三)