【野球】オリックス・山下舜平大の礎とは 恩師が明かす“転機”となった高校時代の逆転サヨナラ負け

 先発し力投するオリックス・山下
2枚

 オリックスの山下舜平大投手(20)が高卒3年目で彗星(すいせい)のごとく現れ、結果を残している。この男のルーツとは。母校・福岡大大濠高校の八木啓伸監督(45)が明かしてくれた。エースナンバーを背負い、逆転サヨナラ負けを食らった試合や入学から欠かさなかった練習、指導法などを振り返る。今季ここまで4勝0敗、防御率0・98。1日・広島戦(京セラ)で先発予定の山下舜平大の原点が見えてきた。

 決して順風満帆な高校時代ではなかった。打たれては、反省。打たれては、悔しがる。その積み重ねが山下舜平大を作り上げた。2019年4月22日、九州大会の準々決勝・大分戦。この一戦が大きな転機となった。

 八木監督はこの大会を「彼、中心でいこう」と決めていた。2年生ながら、背番号1。同点とされ、なおもピンチの七回途中からマウンドへ送り込んだ。このピンチは脱し、味方が3点を勝ち越し。あと6アウト。ただ、ここから勝利に導くことはできなかった。

 八回に2点、最終回にも2点を取られ、10-11で逆転サヨナラ負け。涙はなかった。それでも、八木監督は鮮明に覚えている。「悔しそうな表情をしているのは印象にあります」。試合後、山下を奮い立たせるように言った。

 「勝つことの難しさ、チームを勝たせることの大変さがわかったか。もっと自分を磨かないかん」

 建前上は諭すように怒った。でも、心の中には一つの感情が芽生えていた。

 まだ、山下は成長する。だからこそ、プラスに捉えた。「内心では良かったなと。彼にとっては次につながる。それが励みになっているし、2年秋の成長に必ず伏線としてある」。それまでも地道に練習できる選手だった。だが、この負けをきっかけに練習姿勢や態度が変わった。

 入学時の球速は130キロ程度。「細くてガリガリだった」。食事量を意識的に変え、骨格が大きくなった。30メートル、50メートル、70メートルの遠投と股割りは毎日欠かさない。敗戦を糧にして、2年の秋には140キロに到達。「その可能性になり得るなという球は投げていましたね」。70メートルの遠投で「落ちずに、いい回転のいい球が投げられるようになってきた」。阪神の浜地真澄投手やDeNAの三浦銀二投手など、プロ入りに共通する目安だった。

 八木監督の指導方針で入学からスライダーとチェンジアップを封印し、直球とカーブだけで戦わせた。意図は2つ。カーブをきれいに投げることでフォームのバランスとタイミングが良くなること。そして、こだわりを持ってほしかった。

 2球種ではあるが、磨けば無限大になる。直球だけでも勝負球にカウント球。カーブはストライクからボール、ボールからストライクなど制球を磨けば、投球の幅が広がる。

 当然、球種を絞られた。「いつも打たれてましたよ」と笑う。何度も何度も立ちはだかった、大きな壁。「そこを突き抜けてこい」。八木監督の期待に応えるようにグングンと進化を遂げ、ドラフト1位の投手になった。

 高校時代は常に、同じことを伝えてきた。「速い球を投げるのがエースじゃない。チームを勝たせるのが、エースだ」。彗星(すいせい)のごとくデビューすると、無傷の4勝。先発した試合で、チームは負けていない。

 「オリックスというチームを勝たせられる投手になってほしい」

 福岡大大濠での3年間。八木監督の指導。その全てが山下舜平大の礎となっている。(デイリースポーツ・オリックス担当 今西大翔)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス