【野球】なぜ当日移動ゲームは過酷だと言われるのか 阪神・岡田監督の心配が図らずも的中してしまった背景
当たらなくていい読みが、図らずも的中してしまった。阪神・岡田監督は2日のロッテ戦が雨で流れ、翌3日から9連戦になることが決まった際、「2回の移動やからなあ」とつぶやき、試合を思い通りにコントロールするのが難しくなる可能性があることを危惧していた。
3、4日のロッテ戦には連勝したが、5日の同戦は今季最長5時間7分の激闘で延長12回引き分けとなり、試合終了時に時計の針は11時を回っていた。睡眠時間を十分に確保できないまま翌6日は関西から空路仙台へ移動。岡田監督は試合前に屋外での打撃練習を取りやめるなどの策を講じたが、楽天に1-4で敗れた。
仙台から空路札幌入りした9日の日本ハム戦。チームは空港から宿泊先のホテルを経由せず、そのままエスコンフィールドに入った。自室で自由な時間を過ごせず、体を休めることができなかった影響もあったのか、今季5度目の完封負けを喫し、交流戦4勝5敗1分けで借金生活に転落した。
古くから、当日移動ゲームは過酷だと言われる。一体、どういった面に厳しさがあるのだろうか。
先発投手は基本的に前日移動しており、通常通りのルーティンで臨むことができる。問題は野手だ。
遠征先から本拠地への移動となれば、練習開始が午後2時をメドに設定されているため、前夜からの長い眠りは必ずしも約束されず、朝早い時間からの移動を余儀なくされる。ただ、練習終了から試合開始まで約2時間の空白があり、そこで体を休めたり、マッサージを受けるなどして、疲労回復に努めることはできる。
本拠地から遠征先に移動する場合には、球場入りが試合開始約3時間前の午後3時ぐらい。それまでに宿泊先で体を休めることは可能だが、今回の阪神のように5時間オーバーの激闘翌日であったり、飛行機移動で宿舎に立ち寄らず、直接球場入りとなれば、肉体的な疲労を取り除くことは難しいと思われる。しかもホームチームと比べて練習時間が短いため、特に不調の選手などは練習時間を確保することが難しく、復調の道を探りにくいといった側面もある。
今季、阪神の当日移動ゲームは7試合あり、成績は2勝5敗の勝率・286。ビジターからホームでの試合になって1勝2敗。ホームからビジターでも1勝3敗と分の悪い数字が並んでいる。
阪神OBの中田良弘氏は「当日移動ゲームはどこの球団にも当てはまることだから、それを言い訳にはできない」とした。同じ関東圏でホーム戦、ビジター戦を迎えられる巨人、ヤクルト、DeNA、ロッテ、西武には少し恵まれた部分があるかもしれないが、中田氏は「そういった地理的状況よりも、移動前日の試合結果が大きく作用するんじゃないかな」と指摘した。
「移動日前の試合に勝っていれば、気分よく移動できるから、疲れも飛ぶといった部分がある。でも、前日に負けてると、どうしても移動中のチームの雰囲気が重くなる部分があって、余計に疲れが取れなくなるといったことがあったよ。だから移動前日の試合に勝つことが、当日移動ゲームは過酷だと思わせない要素になると思う」と、現役時代を振り返りながら語ってくれた。
阪神の今季移動日前日の成績はここまで、3勝3敗1分けの勝率5割だが、2度の当日移動を挟んだ今回の9連戦で今季初の3連敗を喫した。ロッテと並ぶ交流戦4勝6敗1分けで、セ・パ両リーグの首位チームが交流戦最下位に沈むという珍現象が発生している。阪神はまず連敗を止めることが目下の最重要課題だが、ちなみに次回の当日移動ゲームは、甲子園から東京ドームに舞台を移す6月30日の巨人戦となっている。(デイリースポーツ・鈴木健一)