【スポーツ】高橋大輔さんが見据える未来「スケーターが長くスケーターでいるために」夢のカンパニー実現へ
フィギュアスケートのアイスダンスで、今季限りで現役を引退した高橋大輔さん(37)が14日、大阪市内で自身が出演するアイスショー「The Ice 2023」の大阪公演(7月29、30日・丸善インテックアリーナ)の取材会に出席。アイスショーを通じて描く、フィギュアスケート界の未来へ思いを語った。
今回のショーでは、村元哉中さんとのアイスダンスに加え、ダンスユニット企画として昨年の北京五輪代表のケビン・エイモズ(25)=フランス=とのタッグで、スケート靴を脱いだ舞台の踊りも披露する。世界で初めてクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に成功したイリヤ・マリニン(18)=米国=と、今年の世界選手権で銀メダルを獲得した車俊煥(21)=韓国=も氷を降りてコンビを組み、2組で競演する。
「最初はどうしようかと思ったけど、チャレンジしたいと思った。どうなるか楽しみ」と高橋さん。競技から引退後は、アイスダンスだけでなくシングルでのアイスショー出演のためジャンプの練習も再開している。また、今回の“陸のダンス”だけでなく「他にもいろんなことに挑戦していきたい。40歳まではインプットしたい」と、引退時に希望していた「エンターテインメントの世界」で枠にとらわれずに挑戦していく意向だ。
その先に見据えるものがある。フィギュアスケートの競技生活は、経済的負担が大きい。また、限られた練習環境のため、他の企業スポーツのように社業をしながら競技を続けることも難しい。セカンドキャリアでアイスショーに出演できるスケーターは、元日本代表クラスのごくわずか。引退後に競技に関わり続けるには、コーチや振付師などに転身することが多い。
そこで高橋さんが目指すのは「スケーターがいかに長くスケーターでいられるか」。そのための「新しい環境をつくっていきたい」と言う。「現役で活躍することは難しかった選手も、エンターテインメントとして魅せる場が広がれば、長く続けられるかもしれない」。表現やエンターテインメント性が高いアイスダンスへ転向した動機も、夢への糧を得るためだった。
「競技はルールがあって、実力を見せて順位を競う。でも、アイスショーはどれだけお客さんが楽しんで帰ってくれるか。もっともっと可能性があるし、いろんなものと融合できる」とショーなら表現の広がりは無限だ。「スケートを見てくれる人が増え、定番のものは知っている。エンターテインメントして、もうひとつ進化したものとして見せていかないといけない」と使命感も強い。
今回の取材で高橋さんは、熊川哲也氏の「Kバレエカンパニー」や「劇団四季」などスケート界以外を例に挙げて、自らの理想を説明した。「“魅せる”というものに特化した場所があれば、競技で(継続が)難しくても、そこを目指せる。カンパニーのようなものができ、生活ができるくらいのものがあれば、いろんな人(スケーター)が増えていくんじゃないかな」。フィギュア界の未来のために、フィギュア界の枠を超えていく。そんな壮大な未来像が「高橋大輔カンパニー」にはある。(デイリースポーツ・船曳陽子)