【野球】なぜ絶好調だった阪神は交流戦で失速したのか?「5割はアカンわ」貯金をもくろんだ岡田監督の誤算はどこに
見るも無残な敗戦だった。阪神が18日のソフトバンク戦で今季最多得失点差となる0-9の完封負け。今季初となる4カード連続負け越しで、交流戦を7勝10敗1分けで終えた。今季最多4万2640人の観衆で埋まっていたはずのスタンドは、終盤の大量失点も重なり、九回の攻撃を迎えるころには空席が目立っていた。
2位・DeNAに6ゲーム差をつけて突入した交流戦。一時は最大6・5差に広げたが、2・5差まで縮められた。貯金は3つ減ったものの、依然として貯金14を抱える余裕がある。だが、2・5差という数字が、必要以上に失速ムードを感じさせている要因だろう。
交流戦前、岡田監督は「(勝率)5割はアカンわ。パ・リーグもそんな強ないよ。ハッキリ言うて」と貯金増をもくろんでいたが、一体どこに誤算があったのだろうか。
まずは勝利目前から一転、敗北に転落した試合が3試合もあったことが挙げられる。8日の楽天戦では1点リードの九回に登板した守護神・湯浅が2四球と制球を乱し、小深田に逆転サヨナラ3ランを被弾。15日のオリックス戦でも、湯浅が1点リードの九回に頓宮、杉本にソロ2発を浴びて逆転負け。17日のソフトバンク戦では、代役守護神の岩崎が1点リードの九回に中村晃に逆転の2点適時二塁打を浴びた。わずか9試合の間に3つの白星がこぼれ落ちた魔の九回だ。
また、交流戦18試合中8試合で七回に失点を重ねたことも戦況を苦しくさせた。イニング別防御率はワーストの8・00。交流戦の3分の2に相当する12試合で七回以降に失点するなど、勝利の方程式がベンチの計算通りの答えを弾き出せなかったことも響いた。
交流戦3試合で失点し、16日に2軍降格となった湯浅は、今季登板15試合中、三者凡退で切り抜けた試合はわずか3試合と、WBCを終えて合流した開幕から完調と呼ぶには遠い状態だった。右肘の張りで抹消された4月に続く再調整となったが、最終的に戻る場所は守護神というポジションだけに、自信と調子を取り戻すためには、長期離脱を覚悟しておくことも必要だ。
もう1点は主力選手が時を同じくして調子を落としたことだ。近本の交流戦打率は・225、中野・222、ノイジー・140、大山・246、佐藤輝・183、木浪・208と軒並み数字を落とし、交流戦のチーム打率・210も12球団ワースト。大山が18試合で2本塁打、佐藤輝も17試合で1本塁打と破壊力を欠いたことも、勝利を遠ざけた要因となった。
岡田監督は「シンプルにやることよ。自分らの戦いを変えんことやな」と交流戦の心構えを説いていた。しかし、好調時には打ち損じに近い打球が安打になったり、神がかったつながりを見せていた打線が、下降線をたどる時には会心の当たりが野手の正面を突いてアウトになったり、ラッキーな安打も減るというような微妙な歯車の乱れが生じ、シンプルに野球をやることを難しくさせていた側面もあるように思われる。
岡田監督は交流戦を振り返って「5月のできすぎの分がちょうどこれ、何かこうなあ、そんなうまくいかんねんから、野球て。ちょうどその反動が交流戦に入って、よう俺は借金3つでいったと思うよ。はっきり言うて。もっと負けてるよ、普通やったら。しのいで、しのいでな、おーん。そら、今のリリーフも調子悪いもんおるからなあ、九回に3回やられたんかなあ。でもそう考えて(借金)3つはもう御の字よ、今のチーム状況からいったら」と、これまでの経験則を踏まえて冷静に受け止めた。
19日から4日間の交流戦ブレークを挟んで、23日からDeNA3連戦に臨む。調子が悪いチームの中には、予定していた休みを削って練習に充てるという手法を採ることがあるが、岡田監督は野手とリリーフ陣は予定通り2日間を休養日とした。
勝って必要以上に喜ばず、負けが多少込んでも慌てない。選手は監督、コーチ陣の普段と違う空気を敏感に感じる生き物であることを岡田監督は知っている。怒る時は怒る。ムチを入れる時は連打する。ただ、今はまだその時でないことも知っている。(デイリースポーツ・鈴木健一)