【野球】“大谷効果”はバット市場にも影響 今季からメーカー変更→「硬い。エグい」米チャンドラー社に熱い視線
エンゼルス・大谷翔平投手(28)がメジャーで三冠王を視野に入れる奮闘を見せている。今季からバットを変更。昨季まではアシックス社製だったが、米国のチャンドラー社製でヤンキースのジャッジの改良型を使用している。日本ではまだなじみのないメーカーだが、大活躍で市場にも“大谷効果”が現れているという。
2008年、メジャーでは折れるバットの数が問題視された。これをきっかけに、09年にチャンドラー社は誕生した。高い安全性と品質向上を目指す同社のバットの特徴は「とにかく硬い」。材質は反発力のあるメープル(カエデの木)。NPBとMLBでは塗装の規則に違いがあるため、MLBのバットには塗装にも特徴があり、ホームランバッターに愛用されている。
米国でシェアは5位ながら、昨季ア・リーグ新記録の62本塁打を放ったヤンキースのジャッジ、通算300本塁打が目前のフィリーズのハーパー、WBCメキシコ代表で日本を苦しめたアロザレーナら一流選手が使用。今季から大谷も同社のバットを使い始めた。
同社ホームページによると、大谷はジャッジのモデルをベースに、少しグリップを細くするなど改良したタイプを使用。今春のキャンプでは「硬い。エグい」と驚いていたという。WBC中には米メディアのインタビューで34・5インチ(約88センチ)、32オンス(約907グラム)と答えている。今季の成績を見ると、新バットと相性はいいようだ。
その結果、チャンドラー社にも“大谷効果”が現れた。日本の正規取扱店「エスアールエス」の宇野誠一社長によると、チャンドラー社は21年にNPBの承認を受け、日本のプロ野球でも使用できるようになった。
ただ、日本のプロ野球選手は実績を残すと、メーカーとアドバイザリー契約する選手が多いため、契約メーカーのバットしか使えないケースが多い。そのため、現在はDeNA・オースティンやロッテ・ポランコら外国人選手が使用しているぐらいだ。
だが、今年は大谷の活躍を見た日本のトップレベルの長距離打者から、契約の関係で試合では使えなくても「試したい」と複数の注文を受けたという。宇野社長は「以前の発注が多いわけではありませんが、今年は倍以上の依頼を受けています」と影響力に驚く。
米国本社からの動きもあった。同社長は「大谷選手の活躍の反響を驚いて『(チャンドラー社製の)バットが日本で広がるのか?』と問い合わせを受けました」。一般販売へ向けて大学野球や社会人野球など日本のマーケットを説明し、市場調査も勧めた結果、今シーズン中に発売を目指すことが決定。BFJ(全日本野球協会)からも公認されており、アマでも使用する選手が増えそうだ。
コレクターからも「大谷選手のバットを買いたい」という依頼を受けているという。「これまではほそぼそと提供していましたが、大谷選手が使用すると認知度が全く違いますね」と宇野社長。グラウンド外でも大谷の影響力は計り知れない。(デイリースポーツ・西岡 誠)