【野球】もし大谷翔平が国民栄誉賞授与を打診されたら- 故衣笠氏の言葉「野球の神様に感謝」を忘れない
もし、エンゼルス・大谷翔平(29)が国民栄誉賞授与を打診されたら、やはり固辞するのだろうか。
11日、マリナーズの本拠地であるシアトルのTモバイル・パークで行われたMLBの「第93回オールスター戦(球宴)」に2番・指名打者で先発出場した大谷は1打数無安打、1四球で交代。3回目の球宴でも待望の本塁打を放つことはできなかった。
14日には後半戦初戦となる本拠地・アナハイムのアストロズ戦では投打二刀流での出場が決まっている。今後は自身の悲願でもあるプレーオフ出場に向けて、さらなる活躍が期待されるところだ。
現在、32本塁打がキング独走状態だけに、日本人初のメジャー本塁打王獲得への夢は膨らむばかりだ。それどころか昨季、ヤンキースのアーロン・ジャッジ(31)が樹立した62本のア・リーグ記録更新も視野に入っている。大谷本人も「塗り替えたいなっていう気持ちはもちろんある」と意欲をのぞかせているほどだ。
8月1日のトレード期限までに、ナ・リーグの球団にトレードでもされない限り、2年ぶり2度目のMVP獲得は現段階でほぼ確定だろう。過去、MLBで、シーズンMVPを獲得したのは2001年のイチロー氏(49)ただひとり。2度の受賞となれば、世界のイチローもできなかった偉業を達成することになる。その上、本塁打王のタイトルホルダーになれば、大谷狂騒曲はさらにヒートアップする。そこで、浮上するのが国民栄誉賞だろう。
過去、日本の野球選手で国民栄誉賞に輝いたのは2001年、04年に打診されたが辞退したイチロー氏、同じく辞退した世界の盗塁王・福本豊氏(75)をのぞけば、ソフトバンクの王貞治会長(83)、故衣笠祥雄氏、長嶋茂雄巨人終身名誉監督(87)、松井秀喜氏(49)の4人しかいない。だからこそ、気の早い話だが、打診された場合の大谷の反応が気になって仕方がないのだ。
私は故衣笠氏の国民栄誉賞の授与式に担当記者として立ち会ったことがあり、いい経験をさせてもらった。1987年のことだ。衣笠氏は同年6月13日の中日戦(広島市民)で故ルー・ゲーリッグ氏の持つ当時の2130試合連続出場記録を更新。同戦で8号本塁打を放って自らの記録に花を添え、国民栄誉賞に輝いた。授賞式はシーズン中だったが、同年6月22日に総理官邸で行われている。
国民栄誉賞表彰規定では「この表彰は広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えることを目的とする」とある。現在、海の向こうで活躍し、日本国内に夢と希望を与え続けている大谷にはピッタリだろう。
大谷本人には、どんな栄誉も記録も単なる通過点にしかすぎないだろう。だが、自らの新記録達成した故衣笠氏がファンを前に「私に野球を与えてくださった神様に感謝します」と話した言葉は今も忘れない。ひたむきに野球を愛し続け、野球の神の感謝する気持ちは大谷も同じだろう。彼がどんな反応をするのか、注目したい。(デイリースポーツ・今野良彦)