【野球】なぜ阪神は前半戦を首位で折り返せたのか 収穫と課題
前半戦84試合を消化して、46勝35敗3分けと貯金11を持って首位で折り返した岡田阪神。開幕4連勝スタートから始まり、5月には球団タイ記録となる月間19勝をマークしたが、交流戦では7勝10敗1分けの10位と低迷。最大18を数えた貯金は7つ減ったが、なぜ阪神は前半戦を首位で折り返せたのだろうか。
今年だけに限らず、投手陣の奮闘が目立った。チーム防御率2・79はリーグ1位。2年連続最多勝のエース・青柳が不振で5月下旬から1カ月半ほど2軍調整を強いられる誤算はあったが、現役ドラフトで加入した大竹が7勝(1敗)、防御率1・48、村上が6勝(5敗)、同1・97と、ともに昨年は1軍で0勝だった左右の両輪が獅子奮迅の活躍を見せたことが大きい。一方で、昨年は自己最多の59試合に登板して2勝3敗43ホールド、同1・09とセットアッパーとしてフル回転し、今季はストッパーに就いた湯浅が、2度にわたって戦線離脱するなど、0勝2敗8セーブ、同4・40と思ったような成績を残せなかった。
阪神OBの中田良弘氏は「青柳が開幕から不調だったのを大竹と村上がきっちり埋めた。村上に関しては自身の貯金は結果として1つだけど、そんなイメージがないぐらい毎回試合を作り続けた。大竹にしてもそう。ソフトバンクから来て、これが最後のチャンスという思いもあっただろうけど、今までの苦労が報われるような活躍を見せてくれた。一方、湯浅に関しては結局のところ、まだ昨年の1年しか1軍で働いてないんだよね。自分ではやれるという手応えはあったんだろうけど、そんな甘い世界でもないし、WBCの疲労もあったと思う。ストッパーになったことで、こちらが求めるレベルが去年までよりさらに高いものになるのは当然なんだけど、ここまでの実績を考えれば、少し目線を下げて見る必要があるとは思う」と解説した。
打線では近本&中野が1、2番に固定され、開幕遊撃こそ小幡に譲ったが、木浪が8番・遊撃として前半戦のチームを引っ張った。4番の大山も昨年までは不振期間が長い傾向にあったが、今年は下降線の波が小さい。チーム打率・236はヤクルトと並んでリーグ5位だが、304得点はリーグ2位を誇る。これはリーグトップの294四球に裏打ちされたもので、最下位の中日は178四球。116個の違いが順位に反映されていると言っても過言ではない。
中田氏は「やっぱり一番大きいのは、中野をセカンドにコンバートして固定できたことかな。それに伴って、木浪を遊撃で使えるようになった。1人の配置転換が2人を生かした。これは岡田監督のファインプレーとしか言いようがない。中野は遊撃の時に送球に不安定さがあった。でも、一塁までの距離が遊撃より短く、少し横からスローする中野にとっては二塁が“天職”だったんだと思う。また、この2人を二遊間に固定できたことで、計算できる併殺が確実に増えた。去年までは併殺の取りこぼしから失点することがあったけど、今年はそういった場面が少ない。これは投手からすると本当にありがたいこと」と投手心理を踏まえ、守備の安定がチームを落ち着かせる要因になっていると分析した。
22日からのヤクルト2連戦から始まる後半戦。2日の巨人戦で死球を受けて右肋骨を骨折し、戦線離脱していた近本が帰ってくることは大きな戦力アップとなる。
また、前半戦は不振に苦しんだ青柳も、再昇格後の初登板となった11日のDeNA戦で、4試合連続失点中だった鬼門の初回を無失点で切り抜けるなど、7回2失点の好投で復活を印象づける3勝目を挙げた。右腕の生命線のひとつでもある低めに集める投球が戻っており、残り59試合での汚名返上に期待がかかる。
中田氏は後半戦のキーマンについて「投手は青柳。前半戦の最後でようやく青柳らしい投球ができた。あの試合でチームも、自分も勝てたことが大きい。大竹、村上は1年間フルで戦ったことがないだけに不安もあるけれど、後半戦は青柳が投手陣を引っ張っていくものと期待している」と語った。
一方の打撃陣については「大山の後を打つ打者がカギになってくるかな。佐藤輝が前半戦最終戦でようやく本塁打を打ったけど、まだ復調と呼べる段階にはないと思う。大山は今年の波が小さく計算できるだけに、後半戦はさらに勝負を避けられるケースが増えることが予想される。だからこそ、大山の後を打つ5番打者、特に佐藤輝がどこまでやってくれるかじゃないかな」とチームを勝利に近づける攻撃陣のキーマンには、3年目の佐藤輝を指名した。
18年ぶりのリーグ優勝に向け、難所は何度も訪れるだろう。それでも岡田監督は、前半戦でムチを入れることはなく、負けるにしても余裕残しの試合を重ねてきた。他球団もそれぞれにいろんな誤算を乗り越えてきた。2位・広島、3位・DeNA、4位・巨人までが6・5ゲーム差の中にひしめく混戦。しびれる場面を多く制したチームが、最終的にトップに立つ。(デイリースポーツ・鈴木健一)