【野球】なぜ阪神・岡田監督は守護神の長期離脱にも動じないのか 湯浅不在でも首位を快走する背景
今季のセ・リーグは守護神を期待された投手の不振と戦線離脱が目立つ。
阪神・湯浅 15試合 0勝2敗8セーブ 防御率4・40(2度抹消。6月16日から抹消中)
広島 栗林 35試合 2勝7敗9セーブ 防御率4・45(1度抹消)
巨人・大勢 24試合 2勝0敗14セーブ 防御率3・00(1度抹消。6月30日から抹消中)
DeNA・山崎 38試合 2勝6敗20セーブ 防御率4・33(抹消歴なし)
それでも阪神は2位・広島に2・5ゲーム差をつけて首位を走る。18年ぶりのリーグ制覇をかけて残り45試合に挑むのだが、岡田監督は再三の守護神離脱にも全く動じる気配がない。なぜなのだろう。
ストッパーでの起用を固めていた湯浅がWBC日本代表に選出された際、岡田監督は守護神について「開幕から流動的って言ってるやん」と日程を含めた体調面、使用球の違いなどを考慮し、序盤は日替わり守護神で臨む方針を示していたが、帰国後の投球内容を見て、開幕守護神を託すことに決めた。それでも湯浅は右肘の張りで4月16日に出場選手登録を抹消され、5月26日に再昇格となったが、6月8日の楽天戦で逆転サヨナラ3ランを浴びるなど、再昇格後の8試合中3試合で複数失点を重ね、6月16日に再び出場選手登録を抹消された。
2度目の昇格間近となった7月30日のウエスタン・広島戦で左脇腹の筋挫傷を患うと、岡田監督は「一番投げられへんやろ、脇腹なんて。長期離脱?もうそら無理やろな、今年はな。そんなん全然何とも思ってないよ。ええやつを使うだけであって」と今季絶望を覚悟し、湯浅不在でシーズンを乗り切る腹を固めた。
シーズンも中盤から佳境に差しかかる時期。復帰を期待していた右腕のアクシデントは間違いなく痛手、誤算となるはずだが、岡田監督は「全然何とも思ってない」と言い切った。その言葉には決して強がりではない響きがあった。
阪神・岩崎 40試合 3勝1敗20セーブ 防御率0・95
広島・矢崎 37試合 4勝0敗21セーブ 防御率1・78
巨人・中川 26試合 1勝2敗3セーブ 防御率2・10
DeNA・森原 28試合 2勝0敗3セーブ 防御率2・45
代役守護神を務める4投手はいずれも素晴らしい成績を残し、チームの上位進出に貢献しているが、岩崎は通算セーブ数で4投手中トップの51セーブもさることながら、10年間で378試合の救援登板という実績と経験値がほかの投手を上回っており、岡田監督は「そらもう絶対的な信頼でな、あのポジションで投げてるんやから。ちょっと調子悪くても気持ちで抑えることはできるしな。そら経験やん」と踏んだ場数の多さに裏打ちされた経験値に絶大な信頼を寄せている。
阪神OBの中田良弘氏は「岡田監督は湯浅に期待はしてたと思うけど、去年はセットアッパーだったから、最初からストッパーとして絶大な信頼を寄せていたわけではないと思うんだよね。離脱してもストッパー経験のある岩崎が穴を埋めたし、湯浅不在を感じさせなかった。ただ、栗林、大勢、山崎は去年からストッパーだった投手だから、それぞれのチームに与える影響は大きかったと思う」と分析し、ペナントレース終盤に向けては「一番計算できるのが阪神だと思う。やっぱりシーズン序盤と終盤では1球の重みが変わってくる中で、抑え経験のある岩崎が九回にいるってことが一番大きい。中川は優勝した2019年に16セーブを挙げているけど、ほかの投手はし烈な優勝争いの中でストッパーとして投げ続けた経験が少ないから、チームとしては歯車が狂った時の計算が立ちにくくなるだろうね。抑え投手の負けはチームに与えるダメージが大きいから」と解説した。
阪神のリリーフ陣は、左腕の岩貞が36試合で1勝0敗17ホールドの防御率1・91、島本も20試合で3勝2敗5ホールドの同2・00、桐敷は球宴後に中継ぎに回り、5試合連続無失点。右腕では加治屋が38試合で0勝2敗11ホールドの同2・48、ケラーも24試合で1勝0敗6ホールドの同1・90、現在、特例2023で抹消中の石井も24試合で1勝0敗9ホールドの同1・09で、8日の巨人戦から1軍に再昇格し、ブルペン陣に厚みが出ることになる。
試合を締める九回から投手起用を逆算できる強みが阪神にはある。チーム打率・242はリーグ5位、チーム本塁打数49本も同5位ながら、チーム総得点373はリーグ2位につける。一方、チーム総失点298点はリーグ最少で、チーム防御率2・75もリーグトップ。広い甲子園球場を本拠地とする阪神が、守りから勝利に近づく野球を実践していることを裏付ける数字となっている。(デイリースポーツ・鈴木健一)