【野球】涙の花巻東監督 9回に見せた父の顔 苦しかった親子鷹の3年間 麟太郎の最終打席は「何とか打ってほしいと…」
花巻東の夏が終わった。19日、全国高校野球選手権の準々決勝で仙台育英に4-9で敗戦。3度目の4強進出はならなかった。
高校通算140本塁打で、プロからも注目されるスラッガーに成長した佐々木麟太郎内野手(3年)。父・佐々木洋監督との“親子鷹”で戦った高校野球生活が、ひと区切りとなった。
9点ビハインドの九回。驚異的な猛攻をみせる選手の姿に、佐々木監督の目からも涙がこぼれていた。「麟太郎がいたので、シニアや県選抜でやっていて昔から知っている子たち。その子たちと野球をやれて嬉しかった。全員の親のような気持ちだった」。ベンチ入り20人全員が出場。「麟太郎に回せ!」と一丸で戦う姿に心が揺さぶられた。
仲間の執念で回ってきた麟太郎の最終打席は、4点を返し、なお2死一、二塁の好機。父の顔となっていた佐々木監督も、「何とか打ってほしいと思って見ていた」と祈るように見つめる。結果は相手の好守に阻まれ、二ゴロ。麟太郎の執念のヘッドスライディングも及ばなかった。
“親子鷹”として注目を集めたが、苦しい3年間だった。高校の進路を決める際、麟太郎の気持ちは花巻東1択。だが、父・佐々木監督は「うちに来ないほうがいいと思っていた」と猛反対した。より注目を浴びることは明らか。子を思って伝えたが、麟太郎は首を縦に振らなかった。花巻東のユニホームを着て甲子園でプレーする夢を捨てきれず、親子の縁を切って進学を決めた。
試合後、父と子からは涙とともに、3年間の思いもあふれ出た。「息子とか関係なく一番怒られたし、トータルして苦しんだ。でも、支えがあって今がある。支えてくれた全ての方々に感謝したい」と麟太郎。佐々木監督も「(麟太郎は)本当に先輩に恵まれた。先輩、同級生、けがが多かったのでトレーナーやコーチに支えられた3年間だった」とうなずいた。
最後まであきらめない姿は、高校野球ファンの感動も呼んだ。「苦しい中でしたけど、誇れる高校野球人生でした」と麟太郎。その3年間を労うように、甲子園からは万雷の拍手がわき起こっていた。(デイリースポーツ取材班)