【野球】仙台育英はなぜ敗れたのか 決勝の誤算 慶応大応援の影響はあったのか 須江監督が冷静に分析した敗因は-
全国高校野球選手権の決勝が23日に甲子園球場で行われ、慶応が仙台育英に8-2で勝ち、107年ぶり2度目の優勝を飾った。
戦前は仙台育英優位の声も多かった決勝。だが、自慢の2枚看板が崩れ、野手陣もらしさを欠いたミスを連発した。慶応の大応援で、完全アウェーとなった試合。前年王者は、なぜ敗れたのか。試合後、須江監督は冷静に敗因を口にした。
歯車が大きく狂ったのは初回、開始1分だった。先発の湯田が投じた先頭・丸田への5球目。2-2と追い込みながら、スライダーが吸い込まれるように内角へ。打球が最も飛ぶゾーンへ入った一球を振り抜かれると、ボールは左翼から右翼へ吹く風に乗り、先頭打者本塁打となった。
須江監督は振り返る。「声援にのまれた感じはなかったんですけど、やっぱりうちは湯田を先発させて向こうは(背番号10の)鈴木君を先発させたうえで、うちが湯田を先発させたのにも関わらず先制点を取られちゃったこと。丸田君のホームランが試合の大勢を決めたというか。球場の雰囲気も慶応空間になったので。湯田も追い込んでから打たれたので悔しかったと思います」。
センバツでも経験済みの慶応の大応援団は想定内のはずだった。指揮官はあまり影響を口にはしなかったが、遊撃を守る主将・山田は正直に印象を口にした。「センバツを超えるような応援で、初回からびっくりした。ヒット一本やホームランですごい歓声が上がっていたのですごいな、とは思いました」。
頂点に立った昨夏も含め、経験したことのない異様な雰囲気。加えて、想定外だった「風」も仙台育英のリズムを狂わせた。初回2死一、二塁で、遊撃に上がった飛球を山田が捕球できず。2点目を献上した。安定した守備を見せてきたが、「風が思ったより舞っていて対応できなかったです」と振り返った。
想定を超えた応援と風は五回、再び仙台育英ナインを苦しめた。この回から登板した背番号1の高橋が2点を失い、なお2死二、三塁。左中間に上がった飛球に対し、中堅・橋本と左翼・鈴木が交錯して落球した。致命的な2点が入り、2-7。試合後、涙が止まらなかった橋本は「声は出してたんですけど相手の応援で全く聞こえませんでした」と、連携ミスの要因を振り返った。
もちろん、応援と風が敗因なだけではない。須江監督は2枚看板の湯田と高橋の状態にも触れた。
「初戦からのいろんな積み重ねがあって、湯田や高橋がある程度疲弊しないでフレッシュな状態で来られたんですけど、それを上回られちゃったので。もうちょっとだけ湯田と高橋の負担が少ない状態を作れなかったのが総合的な敗因かなと思いますね。過去の5戦で。準決勝までで」
昨年は2回戦からの山に入ったが、今大会は1回戦からの出場。しかも初戦から浦和学院、3回戦では履正社など、超強豪との戦いが続いていた。一方の慶応は2回戦から。全て継投で勝ち上がってきた仙台育英はそれでも余力があるかと思われていたが、疲労の差も、少なくなかったのかもしれない。
それでも、須江監督は応援、風、疲労すべての影響を打ち消すようにこう強調した。「単純に強かったです、相手が。あれだけいいスイングをして、いい打球が飛んだら緊張感は増しますよね」。
そして、絶対王者となるべく、課題も口にした。「ここが勝ち切れるようになるかならないかが、僕たちがもう一つ求められているところなんじゃないかなと思いますね。ここを勝ち切れるのが大阪桐蔭さんとか時代を築きあげていった強豪だと思うので、その入り口を突破できるように近い将来頑張りたいですけど」。
すでに名将の雰囲気すら漂わせる40歳。この日の一敗は、仙台育英をさらに強くする大きな財産となるに違いない。(デイリースポーツ取材班)