【芸能】マネジャーが明かす、頭脳警察・PANTAさんのラストデイズ
伝説的ロックバンド「頭脳警察」のメンバーで、7月7日に肺がんのため73歳で死去したPANTAさんの「お別れ会 献花式・ライブ葬」が9月1日、東京・渋谷のライブハウス「duo MUSIC EXCHANGE」で行われる。PANTAさんと頭脳警察のマネジャーが、PANTAさんの最後の日々を明かした。(デイリースポーツ・藤澤浩之)
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PANTAさんは2021年8月に倒れ、肺がんで余命1年と宣告された。以前にも前立腺がんを患っており、さらに脊椎管狭窄(きょうさく)症、小脳梗塞や重度の肺腺腫もあって、活動が「肉体的に厳しくなっていた」という。
マネジャーはPANTAさんとじっくり話し合い、最後までマネジメントを「やってほしい」と頼まれた。「これから先を引き受けるということは、亡くなるということまで引き受けるということ。最後まで付き合う」と腹をくくり、「365日、毎日一緒にいるような」濃密な日々を過ごした。
余命1年と宣告されたPANTAさんだったが、1年2カ月後の昨年10月には大阪で舞台「オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-」に頭脳警察として出演。往復の新幹線の車内、2人きりで話した時、マネジャーに「音楽をやりきりたい」と打ち明けた。マネジャーは新たなライブと、オリジナルとしてはおそらく最後になるであろう、アルバム制作のスケジュールを組んでいった。PANTAさんは「できることを全てやる、生きるという、強い気持ちを持っていた」と、マネジャーは振り返った。
PANTAさんは今年2月1日に体調が急変して入院したが、4月14日に退院。頭脳警察のニューアルバムのためのボーカルのレコーディングは、13曲を全て終えた。6月14日には頭脳警察のライブに出演して8曲を歌ったが、その後に体調を崩し、これを最後のライブとして7月7日に死去した。
ライブ当日、マネジャーが「どうしても歌ってもらいたい」と思っていたが、なかなかその機会がなかった頭脳警察の「あばよ東京」をPANTAさんが歌った。選曲を知った時、マネジャーは「今日が最後(のライブ)になる」と直感。頭脳警察のメンバーに「リミットを外して、好きにやってほしい」と伝えたという。「(このライブでPANTAさんは)やりきったと思います」。
PANTAさんは会話が難しくなってからも、マネジャーとはLINEで仕事の打ち合わせを続けていた。ソロのファンのために、ソロのリクエストベストライブを行う企画もあったという。「最後の最後まで考えていたと思います。だいぶ苦しくなって、電話でしゃべるのが難しくなっても、今はLINEがありますから」(マネジャー)。来年に迎える頭脳警察の55周年を視野に入れて、PANTAさんは最後の最後まで現役の「ロック屋」として走り続けた。
マネジャーは「もちろんPANTAさんは神様じゃない。自己矛盾がたくさんある、人間中村治雄ですから」という。そんなPANTAさんを「近くで見ることができて、創作現場にも携わって、全てを見られた。そういうことはたぶんない。自分の人生をかけて、頭脳警察のマネジャーをやることができた。それは本当に幸せなことだと思います」。
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9月1日は午後4時から5時30分まで自由参加の献花式を行い、午後6時からライブ葬参加者の献花式、午後7時からライブ葬を行う。ライブ葬は、生前の元気だった頃のPANTAさんの歌唱映像と、頭脳警察のメンバー(石塚俊明、澤竜次、宮田岳、樋口素之助、おおくぼけい、竹内理恵)による演奏でライブを行うものだ。チケットは完売しており、当日午後7時から3日午後11時59分までの期間限定で有料配信を行う。
ライブ葬の後も、頭脳警察のニューアルバムのリリースをはじめ、マネジャーの仕事はめじろ押しだ。PANTAさん、頭脳警察の世界を同時代に、そして未来に伝えるために。